食品マーケティング&食品商品開発
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小川マーケティング事務所

食品マーケティングのヒント???


マーケティング理論に囚われすぎるリスク


6月初旬の日経MJの記事(「モノ」のヒットが出にくい時代 心捉えるマーケティング)が目に留まりました。
小さな記事ですが、最後に「マーケティング思考の重要性が一段と増しています」という文章で締めているのですが何故か気になりました。
マーケティング思考とは何なのでしょう。

そもそもマーケティングとは企業が業績向上を目的にして行う諸活動の集合体だと私は常々思っています。
大手、中堅、中小企業その内容は異なりますが売り上げ、利益を上げて業績向上につなげるための諸活動はどこの企業でも行っています。
中小企業、個人事業者においてはマーケティングという概念、マーケティング理論は全く知らなくても「どんな人に買ってもらうどんな商品にしようか」「たくさん売れるため、利益を上げるために価格はいくらにしようか」など色々考え、施策を講じていますが、これも間違いなくマーケティングであり、マーケティング思考が存在しているのは間違いありません。
当事者にとってはマーケティングを行っているという意識は無いでしょうが。

私が気になった点は、実際の企業において「マーケティングが大切」「マーケティング思考が重要」などと、解ったようで解らない言葉で物事を進めてしまうことの危険性です。
今回の記事においても「従来のマーケティング理論に囚らわれることなく、新しい発想で業務を行うことが大切」となっていれば、次のアイデア、施策が出やすくなると思いませんか?

先日ある企業のマーケティング担当者の方から相談を受け、お会いして話す機会がありました。
非常にマーケティングに精通されて知識も豊富なかたで筋の通った企画書も見せてくれました。
しかしながら、企画書は「顧客価値の創造」で終わってしまっていたのです。
社内プレゼン資料ならまだしも実際に行動していかなくてはならない立場では不十分です。
本人も「この先をどうするかで頭を抱えています」と言っていました。
今回の件は決して珍しいことではありませんが、やはりマーケティング、マーケティング理論に囚われた結果のように思います。

異論はあると思いますが、私はマーケティング理論は経験則で成り立っていると思っています。
経験則である以上、社会が変わり、消費者心理が変われば従来のマーケティング理論は通用しなくなります。
私も30年近くマーケティングに携わってきましたが、マーケティング理論は物事を考える場合の参考にはなりましたが(反面教師も含め)やはり自分の目で頭で消費者を観察し、心理を理解することに勝るものは無いと思っています。

若い方は覚えていないかもしれませんが、詩人、劇作家の寺山修司の言葉に「書を捨てよ、街に出よう」という名言があります。
一度マーケティング理論を離れ、自分の頭でアイデア、施策を考えてみたらいかがでしょう。