投稿者「ogawa109」のアーカイブ

「ソウルマッコリ」「ごまリッチ」ヒットの要因

日本経済新聞社の2011年上期の日経MJヒット商品番付にサントリーの「ソウルマッコリ」とミツカンの「ごまリッチ」が上位にランクされました。

ヒットの要因がソウルマッコリは「コト」の魅力、ごまリッチは「モノ」の魅力となっており非常に対照的です。

 

ソウルマッコリのコマーシャルを見た方も多いと思いますが、韓国の人気俳優であるチャン・グンソクを使ったテレビコマーシャルがヒットの要因に他なりません。 他の酒類、他のマッコリとの品質、味わいといった商品差別化はほとんどない、というかサントリー社にあっても消費者にはほとんどありません。 私の周りでもマッコリとはどのようなものかは知らず「チャン・グンソクがコマーシャルしている『ソウルマッコリ』を飲んでみたい」という女性が多くいました。 チャン・グンソクが視聴者に語りかけるコマーシャルは多くの女性の心を捉え、ソウルマッコリを飲むことでのチャン・グンソクとの繋がる世界(コト)の提案でニーズを作り出しています。 コマーシャルには注目度を高めるためにタレントを使うことが多くありますが、タレントの使い方という点で非常に上手なコマーシャルと言えます。 トライアルユースの促進でヒット商品となった典型的事例ですが、どこがつくろうと、どんなおいしさであろうと関係なく、すなわち商品の魅力でヒットしたわけではないのでリピートユースに繋がるか、また他社がソウルマッコリに追随して今以上にマッコリブームがおこり市場が拡大するかは今の時点では疑問です。
ヒット商品の一つの成功事例ですがどこでもが真似の出来るマーケティングではありませんね。

一方ごまリッチは商品(モノ)差別化での成果と言えます。 「胡麻(ごま)」に対する健康イメージの高さをうまく利用してこれまでの「ふりかけ」との差別化が一番の成功要因ではないでしょうか。 絶妙な差別化がされています。 健康イメージの高い素材は色々ありますが、全く新規の素材を使えば消費者は警戒感を持ちかねません。 これまで使われていた素材の割合を変えることで商品の魅力を高め、商品名を「ごまリッチ」として商品特徴を訴求するという素晴らしいアイデアだと思います。
ミツカン社は成功の要因として「ごま塩の味の物足りなさと寂しい外観が製品化の課題となっていたが、鮭や梅、明太子といった素材をごまにパウダーコーティングすることで、「ごま」を主役としながらも、ごはんに良く合い、彩りも華やかなふりかけとして『ごまリッチ』が誕生」としています。

食べるラー油のヒットから学ぶ新製品・新商品開発のヒント

雑誌、サイト、ブログなどで「辛口ブーム」「内食の増加」「ネーミングの妙」など「食べるラー油がヒットした理由」が色々紹介されています。

ここでは、新製品・新商品開発に関係している一人として「ヒットした理由」という視点ではなく「何故このようなヒット商品が誕生したのか」という視点で考察した結果を書いて見ようと思います。

今回のようなラー油は中国では家庭でよく作られているそうで、 中国人の方が今から10年前ぐらいに石垣島に移り住み食堂を開き中国の自分の家庭で作っていたラー油を提供し、そのラー油の具材に島とうがらしなど地元の食材を使用したこともあって観光客に「石垣島みやげ」として人気が出ていました。 テレビで紹介されたりブログに取り上げられたりで徐々に多くの人に知られるようになりましたが、 この時点では野菜炒めなどのかけて食べるという調味料だったようです。

普通このような状況(一部で大きな話題にはなっていてもたくさん売れていない)で大手企業が参入することはまず考えられません。 これまで餃子をつけるのが主たる需要のラー油に「辛そうで辛くない少し辛いラー油」という名前をつけ、より大きいサイズの商品を発売しても売れるとは思えません。

結論が先になりますが「食べるラー油」はご飯にかけて食べる、つまり「このラー油をご飯にかけるとご飯がおいしく食べられますよ」という提案が消費者に受け入れられた結果ではないでしょうか。

潜在ニーズの開発です。 潜在ニーズというと心の奥底に潜んでいるニーズであり消費者が持っているものと思いがちですが、マーケティングでは「消費者ニーズとは生まれる可能性があるもので持っているものでは無い」という考えがあります。

桃屋社はご飯に乗せる食材の開発、製造、販売をしておりその分野での消費者動向の把握、チャネル対応、製造設備など十分な資源、つまり今回の商品に関しても会社としての強みがあったはずです。 その背景に基づく問題意識で消費動向、消費者行動を観察していたからこそ、それらの変化をいち早く捉える事が出来たのでしょう。 そして「食べるラー油」というコンセプトにすることで調味料であったラー油を自社の事業分野に持ち込み自社の強みを生かした新製品・新商品開発を進めました。

新発売後、予想を上回る人気となり品切れとなりますが、その時の品切れの謝罪広告がブームに更に拍車をかける結果になっています。 品切れはまさに怪我の功名だったのでしょう。 また、エスビー食品社などの追随が市場全体の盛り上がりを作り出してくれることにもなりました。

会社の強みがあって、それを背景にした問題意識が消費者の変化を捉え、自社の分野へ持ち込むコンセプトの開発をし、自社の強みを生かした魅力的な商品を作り出し、それに加え、品切れでブームに拍車がかかり、他社の追随で市場全体が盛り上がることで大ヒットになったと思います。

新製品・新商品開発で必要なものは「会社の強み」と「問題意識」と「創造力」 そして大ヒットするためには「時の運」が必要です。

【余談】 何故「ご飯にかける」という提案が生まれたのでしょうか? 消費者調査で判るとは思えないし、何故そのようなアイデアが生まれたのか色々調べてみました。

日本橋にある桃屋社の近くに10年前ぐらいから同じようなラー油を作ってお客様にサービスをしている中華料理店があり、何年か前からそのラー油をチャーハンやご飯にかけるお客様が増えてきていていたそうです。 近くの桃屋社の社員の人も出入りをしていてそのような状況を目にしていた可能性は考えられます。 推測にすぎませんがが、もしそうだとしたら「江戸むらさき」などご飯に乗せる商品の専門家である桃屋社だから、石垣島ラー油のブームと新製品・新商品開発の方向性がそこで結びついたとしても不思議ではありません。

そう言えば以前会社勤めしている時の話ですが、昼食で中華に行くと必ずチャーハンを注文してカウンターにある小さなスプーンのついたツボのような小さなガラス瓶に入った刻み唐辛子入りラー油をたっぷりかけて食べる部下がいました。 その分野の新製品・新商品開発はしていなかったので「エネルギッシュな奴だな」という感心だけでラー油をご飯にかける商品化のアイデアは思いつきませんでした。

生かりんとう???

最近生カステラ、生チーズケーキ、生ドーナッツといった「柔らかい」「もちもち」とした食感の洋菓子が人気になっています。

札幌の洋菓子店が昨年末に「生かりんとう」専門ショップをオープンしました。 写真で見るように店舗はドーナツショップそのものだし、パッケージも洋風。 競合品はドーナツなのだろうが、敢えて別カテゴリーの商品名をネーミングにしている点がおもしろいですね。

そこでドーナツとかりんとうの違いを調べてみました。 どちらも主原料は小麦(ここで紹介している「生かりんとう」は小麦の代わりにもち米を使用)、それに食塩を加え、イーストや重曹で膨らませたものを油で揚げる点は同じ。 違いと言えば、ドーナッツにはその他の原料として卵、牛乳が加わり、かりんとうは揚げた後に乾燥させて保存性を高めている点です。

この「生かりんとう」はもち米を主原料として卵、牛乳を使っていないスティック状の「ドーナツ」で、乾燥させていない「かりんとう」です。 となると商品のネーミングは「もち米ドーナッツ」「スティックドーナツ」、もちもち感が強ければ「生ドーナツ」でもいいことになるわけです。 卵も牛乳も使っていない「もち米ドーナッツ」であれば食物アレルギーのお子さんのおやつとしてニーズがあるし、「スティックドーナツ」であればかぶりつかなくていい食べやすいドーナッツとしてニーズがあるのではないかと思います。 しかしネーミングを「ドーナツ」ではなく「かりんとう」にした点がおもしろい。

すごく「新規性」を伝えるネーミングで、それゆえにお客様が商品に気づきやすく強く興味を持ち「買ってみようかな」という気持ちにさせられる消費者もおおいのではないでしょうか。 また「新規性」ゆえの話題性もあります。 現にサイトを見てみるとテレビ局、雑誌の取材も結構あるようで、間違いなくトライアルユースを促進しているはず。 「生ドーナツ」と言うネーミングではこのようなことにはなりにくでしょね。

食品の場合いくら価値があっても(この場合おいしさ)食べてもらわなくてはそれを伝えることが出来ず、その後のリピートユースにも繋がらないのでその意味では素晴らしいネーミングだと思います。

商品の「新規性」はこのようなメリットがある一方、やみくもに「新規性」だけを追求した商品はお客様にその商品に対する「警戒感」を与えてしまうというデメリットがあります。 店舗構え、パッケージで「ドーナツ」らしさを打ち出すことで警戒感を緩和しているかも知れません。

後は「生かりんとう」というネーミングからお客様が抱く期待と実際の味わいがマッチしているか、他のドーナツとの差別化が伝わるかがこの商品が継続的に売れるか売れないかのポイントではないでしょうか。

キリンラガー桜缶

昨日の夕食のテーブルに「キリンラガー桜缶」が乗っていました。 アサヒビールに籍を置いたことがある私ですが、ビール好きの女房がスーパードライよりラガーの方が好きだと言うので我が家の定番ビールは「キリンのラガー」です。

アサヒビールの皆さん、ごめんなさい、「おいしさ」って主観的なものですのでお許しください。

ネットスーパーで「キリンラガー」を注文したらたまたま桜缶が届いたというだけで、桜缶を選んで買ったわけではないようです。 缶を開けながら「これってどういう意味があるんだろう。中身は同じなんだから他の銘柄を飲んでいる人は買わないだろうし、味が違うなら飲んでみようと思うけど」とつぶやくと「これは季節限定なのよ」と答えた女房の横で娘が「お花見の時にコンビニでビールを買うことになったらこれを買うな」と話に入ってきました。 そうそう、ちなみにアルコールに極めて弱い娘は「これが一番おいしい」と言って「アサヒのダブルセロ」を飲んでいます。

娘の話を聞いて「そうか」と我に返りました。 「モノ」の提案ではなく「コト」の提案商品だとあらためて教えてもらったのです。 食事中であることとあまり深く考えていない会話だったことを差し引いてもマーケッターとして不覚でした。 食事が終わってサイトで調べたところ、キリンビールのニュースリリースには下記のように書かれていました。

広告では、菅原文太さん、江口洋介さんに登場いただき、お花見のシーンで仲間と一緒に「キリンラガービール」を楽しむ新テレビCMを放映します。(中略)今回、味覚特長である“のどにグッとくる刺激感”“コク・飲みごたえのある味わい”はそのままに、お花見を楽しむ桜のデザインという新たな価値を提案することで、春のうれしい乾杯シーンを盛り上げます。

「おいしさ」を楽しんでもらう「モノ」としての桜缶ではなく、桜缶はそれを飲むことで「楽しみ」という「コト」を提供する商品だったのですね。 ちなみにアサヒビールも「スーパードライ」をはじめとしたいくつかのブランドで発売中あるいは近日発売予定だそうですが、 商品コンセプトは全く同じです。

ヤマサ醤油「鮮度の一滴」

お使いの方も多いと思いますが、昨年の日経トレンディのヒット商品番付で16位に入ったヤマサ醤油の「鮮度の一滴」。

ヤマサ醤油にいる私の友人が開発した商品で、鮮度を長持ちできる特殊構造の容器を採用した醤油で中身はこれまでの醤油と何ら変わりはありません。 ガラス瓶やペットボトルに入った醤油は一度開栓すると酸化して鮮度が落ちてしまうので「いつまでもおいしい醤油を楽しんで欲しい」という目的で開発された新商品。

新製品・新商品開発としては二つの点でとても参考になります。 一つ目は中身はそのまま、容器を変えることでヒット商品にした点。 二つ目は自社商品を否定して顧客への提供価値を高め、新しい消費者ニーズをつくった点。 普通は「これまでの醤油をどう説明するんだ」「これまでの醤油とカニバリするだけ」と言う意見、理屈が社内で出て発売は難しいものですが、ヤマサ醤油はそれをやりました。

二点目はなかなか出来ることではありません。 ちょっとひねくれて考えると、トップメーカーではなかったからかもしれないのですが。

友人に聞いてみたところやはり社内を通すのが一番苦労したと言ってたが、最終的に「GO」の決裁が出てヒット商品に。

こういう会社は伸びる会社です。