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人間は食品を口にする時、情報から味わう

昨年末に社会問題化したホテルやレストランにおける食材偽装問題。
人間が記憶に刷り込まれた情報で食品のおいしさを判断するという消費者心理を巧みに悪用した事件でしたね。

車エビとブラックタイガー、焼いたり煮たりソースがかかった状態でどのくらいのおいしさの違いがあるのでしょう。ブラインドで食べさせられたら区別がつかないかもしれません。
しかし、それを食べた消費者は「おいしいものを食べた」という満足感の価値を享受していることも事実です。

食べたいものがすぐ手に入る日本で消費者が食品に求める価値は
一、おいしさ
一、健康
一、安全
売上げを上げるため、コストを下げるために嘘をつくのはもってのほかですが、嘘をつくことなくお客様に価値を提供していくことは今の日本の食品市場では大切です。

単に「低価格である」と言う価値ではなく、消費者が価値を感じる要素、情報を見つけ出し、それを製品に反映させて、価値がより解りやすいように商品化(ネーミング、パッケージ、キャッチコピーなど)を工夫することが新製品・新商品開発の一つの大きなポイントではないでしょうか。

コストが高く販売価格が高くなっても、そのような商品を求めるお客様が確実にいることを今回の事件が教えてくれました。

人に自慢できる商品を目的とした新製品・新商品開発

皆さんは新製品・新商品開発を始めるにあたってどのような商品をつくろうと思いますか?
「売れる商品」「利益の出る商品」「お客様に喜んでもらえる商品」「消費者ニーズを満たす商品」など答えは様々でしょう。

私は「人に自慢できる商品をつくる」ことを目的に新製品・新商品開発を進めてきています。
「これいいでしょ」と人に聞いて「それいいね」「それすごいね」との答えがもらえる商品です。
横柄、上から目線と思われる方がいるかもしれませんが、専門家なのですからこのぐらいの意気込みは必要でははないでしょうか。

ありきたりの商品では決して自慢できませんよね。
自慢できるのは、他の商品とは違った、今まで人が気が付いていない価値を持った製品、商品でなくてはなりません。
そのために製品レベルの価値の違い、商品の物語性、商品、情報発信、販売方法の差別化など自慢できる要素が必要になります。

自慢できる商品を生み出すために私が行なってきた方法を参考までにお伝えします。
それは、友人、知人の誰かひとりを頭に思い浮かべ、その人に自慢できる商品を考えてみることです。
相手が違えば自慢できる商品のアイデアがいくつか出てくると思いますが、自社の状況、市場の環境、ターゲットの大きさなどを勘案してそのアイデアを絞り込みます。
意外と簡単に出来て大きな効果が期待できます。
是非一度お試しになられてはいかがでしょう。

鮨びぃる

九州の友人から「鮨びぃる」なるものが送られてきました。
熊本にある「花の香酒造」という酒蔵の商品です。

以前に日経MJの新商品コーナーで紹介されているのを見て気になっていた商品です。
清酒という表示がありますが、従来の清酒の味わいではなく酸味が効いて甘みも残っり、アルコール度数も通常の清酒の約半分の7%、そして発泡性でなかなかおいしい(私には向いている)お酒です。
酸味が強いために味覚をリフレッシュさせて刺身などがおいしく感じますし(甘みがちょっと強いでしょうか)、ビールのようにお腹が膨れることもなく、清酒のように酔いが強くなることもありません。まさに和食の食中酒としてはもってこいの酒だと思いました。

低アルコール清酒は清酒メーカーからいくつか出ています。
市場規模は清酒全体の約1%ということでまだまだ小さな市場ですが、新しいお酒として今後伸びていくのではないかと思います。

この商品の参考になる点は低アルコール清酒ではなく新カテゴリの酒として打ち出してきているところです。(製造元のサイトを見ると「低アルコール日本酒」のカテゴリで紹介されてはいますが)
低アルコール清酒、日本酒となると従来の清酒、日本酒の亜流イメージ(従来の清酒が本物でそのまがいもの?)がありますがこの商品にはそれが感じられません。

推測ですが、製造工程は清酒と大きくは変わらないでしょう。
低アルコール化した清酒ではなく、長い年月で蓄積されてきた清酒づくりのノウハウ、技術を生かして生み出した新しいお酒とのポジショニングは見事だと思います。(酒税法上は「清酒」ですが)

皆さんの業種でもこのような考え方で新製品開発をされると、お客様にとって魅力的かつ新しい価値を持った商品が誕生するかもしれません。

人造イクラってご存知だと思います。イクラのまがい物というイメージがありますが、その技術でスペインで製造されて人気が出ている商品があります。
人造イクラの製法を新しい加工方法としてとらえることで生まれた新商品のようです。
Caviaroli Olive Oil Caviar
興味のある方はこちらをご覧ください。 http://caviaroli.eu/

今回の「鮨びぃる」もそれと通じるところを私は感じます。

コモディティ化戦略 ハウスとS&Bのからし

家内がハウスとS&Bのからしを買ってきました。パッケージを見比べて驚きました。色使いは多少違うものの書かれている内容はほとんど同じで、企業ロゴが無ければどっちの商品かわからないほどそっくり。(画像をクリックすると拡大するのでお確かめ下さい)

相違点(差別化点)を探せば、ハウスのメインビジュアルが「とんかつ」であるのに対しS&Bは「シュウマイ」(サイドに「とんかつ」画像がある)。さてどっちの料理の方がからしの使用頻度、使用量が多いのでしょうか。
もう一つはハウスが22gに対しS&Bは23g。1gの増量は何を意味するのでしょう。ほとんどの消費者は気付いていないと思います。

あくまでも推測ですが、両社とも元々チューブ入りからしは販売しており、ハウスが先にその上級品として「特選 本香り からし」を発売し、S&Bがそれに追随して「本生 本からし」を発売した経緯があるのでしょう。
このような割り切った商品戦略もあっていいと思います。二社択一の選択に消費者を引き込み、このカテゴリを二つのブランドで占有していくことで両社の利益が出るのであれば。

実査にPOSの月次データで確認したところ、二つのブランドが販売量で上位にありややS&Bが多いもののほぼ拮抗しています。しかしながらブランド間の差異がないことから、結局は価格競争になって来ているようです。
消費者にしてみれば、同じ商品にしか見えず、二つ並んでいる場合少しでも価格の安い方を手にすることが多いのではないでしょうか。POSの日次データで見ると平均価格が低い、すなわち店頭での特売の有無で1.5倍ぐらいの販売量の開きが見られています。

差別化戦略だけでなくこのようなマーケティング戦略でも自社に成果が出ることもあります。
さて、皆さんがもしこのカテゴリに新規参入するとすればどのような商品戦略を取るか考えてみたらいかがでしょう?

高級?さくらんぼ 差別化、高品質、高価格商品成功事例

そろそろ「さくらんぼ」の時期になってきました。

桐の箱に入って数万円の「さくらんぼ」もありますが、ごく普通の佐藤錦という品種の「さくらんぼ」のおいしさを追求した結果、高価格品になったもののお客様に喜んで買ってもらえた事例を紹介ます。

今から10年近く前、私がアサヒビールのインターネット業務を行うグループ会社を任されていた時の話です。

その会社ではグループ各社の商品を販売するオンラインショップも運営していました。グループ会社にニッカウヰスキーがあり、蒸溜所のある北海道余市(よいち)の自然風土の良さを訴求して少しでも企業イメージを高めるために、オンラインショップで余市のさくらんぼを販売してその目的を果たそうと考えました。余市は山形に次ぐ「さくらんぼ」の産地です。

工場の従業員の知り合いの農家を訪問し、趣旨を話し出始めのさくらんぼを口にしたが格別おいしいというものではありあmせんでした。「もっとおいしいのはありませんか」と聞いたところ「木で熟成させたものは驚くほどおいしいけどそれは販売できないんですよ」と言われました。
詳しく聞いたところ、二つの出荷できない理由があり、一つは「完熟しているので傷みが早く店頭に長く置けないので商品価値がない」というもの、そしてもう一つは「木に生ったまま熟成させると木が弱り翌年は収穫出来なくなる」というものでした。
そのような理由から「さくらんぼ」は完熟前に収穫し出荷するというのがさくらんぼ農家の常識だったのです。
そこで納得して引き下がったらそこで話は終わったのですが、私は引き下がることをしませんでした。
実は何年か前に余市で驚くほどおいしい「さくらんぼ」を食べたことがあり、それが木で完熟した「さくらんぼ」であったことをその時確信したのでした。

その場で「通常の二倍以上の価格でいいので売ってください、返品は一切しません」とお願いしたところ「収穫する木を毎年決めてそれ以外の木ではそのようなことをしないので数量は限定する」という条件付きで了承してくれました。その後、最初に収穫した完熟さくらんぼが会社に送られて来て社員皆で試食しましたが、そのおいしさに大騒ぎであったことは言うまでもありません。

仕入れ価格が高くなったこと、日持ちがしないので配送方法に工夫をしたことなどから、最終的に一般店頭で販売している二倍以上の販売価格になってしまいました。また、天候の影響があって収穫日が決められないことから、受注も届け日の指定が出来ない予約受注にせざるをえなかったりでサービスレベルは低下しました。そして容器も普通の段ボール箱、粒も普通の大きさでやや不揃い、見た目だけではとても買ってもらえそうな商品ではありませんでしたが、ネットショップ内でおいしさ、価格の高さの理由をきちんと訴求した結果、ネットショップではたちまち人気商品になりました。

このブログを読んで、ぜひ食べてみたい、と思った方もいるでしょうが、残念ながら、今はオンラインショップはあっても「さくらんぼ」の販売は行っていません。
さくらんぼの販売は3年ほど続きましたが、その後アサヒシール本社の「生鮮品の品質保証をする体制がないので生鮮品は扱わない」という方針が出て終了となりました。

最初から高品質、高級品を提供しようというのではなく、おいしさを追求した結果高価格になってしまったわけですが、その理由、価値をきちんと訴求することで高価格でも買ってくれるお客様が存在しているという事実を証明する事例として紹介させてもらいました。

 

 

 

トクホのようでトクホじゃないカナダドライ

コカ・コーラ社が先月発売した「カナダドライ ジンジャーエール FIBER8000」がネットで話題になっています。(画像左側、右側は昨年キリンビバレッジ社が発売した特定保健用食品「キリン メッツコーラ」)

「トクホと誤解を招きやすい」という意見が大勢ですが、コカ・コーラ社の肩を持つわけではありませんが、トクホと間違えて買ってもらおうという考えではなく、新発売時に必要な「話題作り」が真意と思います。その意味でパッケージ、広告におけるマーケティング施策は、飲料業界トップとしての品位を多少疑うものの決して間違っているとは思いません。

話題が高まる一方で、商品、企業ブランドの低下というリスクは免れないと思いますが、安易にクリエーターの遊び心を受け入れたわけではなく十分計算した上での決断だったのではないでしょうか。

この件に関する広報のコメントが掲載されていますが、広報マンの悲哀を感じざるを得ません。はっきり「話題作りです」とはなかなか言えないでしょう。

次に考えられるシナリオですが

キリビバレッジがデザインの類似性で訴訟を起こす。その結果、メッツコーラの認知度がさらに向上し売り上げが伸びる。コカ・コーラ社は多少なりともコーラのシェアを奪われることになり、今回のマーケティング施策は失敗に終わる。

というのは考えすぎでしょうか。

千疋屋のオレンジゼリー

母の日ということで、昨日千疋屋のオレンジゼリーを買って実家に行ってきました。

千疋屋は創業1834年の千疋屋総本店からのれん分けした京橋千疋屋と銀座千疋屋の三店があり、今回のオレンジゼリーはエキュート品川にある京橋千疋屋で購入したものです。

東京に住んでいても三つの千疋屋があるということを知っている人は少ないのではないでしょうか。ともかく「千疋屋」というだけで高級果実を連想させる強いブランド力があります。

私も過去に何回か食べたことがありますが、千疋屋の果物、スイーツを日常的に口にする人は多くなく、高級さゆえの贈答用などハレの時の商品として利用されることが多いはず。この商品も例外ではなく(何しろ一ケ630円)芸能人御用達商品とも言われています。

この商品は写真のようにオレンジの上部をカットし、蓋と本体にわけて蓋はそのまま、本体の方は中身をくりぬきそれを使って作ったゼリーを本体に戻して詰めるという、確かに手間がかかっている商品ですが、「千疋屋」というブランドがなければ、これだけ高い価格で売れる商品にはなっていないことも確かです。

贈答市場においては、高級感、高価格品という話題性が購入動機になることが多く、私の場合も「おいしいものを母に食べさせたい」というより、家族間での話題作り、母に高級品を食べさせたという自己満足によるところが大きかったのです。

senbikiya02最後に、

初めて知ったこのシールの存在。

柑橘類の香りのほとんどは外皮にオイル状で存在しており、絞るという行為よって新鮮なオレンジの香りを持った果汁がゼリーのおいしさを高めるとというとても理にかなった情報提供に納得。

 

 

 

 

特定保健用食品 キリン メッツ コーラ

テレビCFで知って「キリン メッツ コーラ」買ってみました。

日本の清涼飲料市場において「コカコーラ」が確たる地位を保ちコーラ飲料というカテゴリーを作っています。 そして、ビール各社はコーラカテゴリーに対して各社各様のマーケティング戦略を取っています。
サントリー社は「ペプシコーラ」の米国ペプシコ社と提携して「ペプシコーラ」、アサヒビール社はグループのアサヒ飲料社から、素材の差別化をした「グリーンコーラ」、ロングセラーブランド「ウィルキンソン」のラインエクステンションである「ウィルキンソン コーラ」を相次いで市場導入し、そして今回キリンビール社がキリンビバレッジ社から特定保険食品という機能差別化のコーラを市場に導入してきました。

戦略の基本的な理屈は共通しています。 コーラ飲料は消費者によく飲まれている、現在飲まれているコーラ飲料からのブランドスイッチを図り、自社の利益につなげたいというものです。 現在人気のある、話題になっている商品カテゴリーに新商品を投入するのはマーケティング施策の常套手段です。 しかしながら、「ペプシコーラ」は善戦しているとはいえまだまだコカコーラとは市場シェアで大きな差がありますし、「グリーンコーラ」「ウィルキンソンコーラ」は早くも姿を消しています。

コーラカテゴリーに新商品が育たないのはなぜでしょう。 一番大きな理由は「コカコーラ」の持つ薬くさい独特な味わいにあるのではないかと思います。 最初違和感、抵抗感を持つ味わいのことを「Aquierd Taste(-慣れることでおいしさを感じる味わい)」と言いますが、 このような味わいはとっつきは悪いものの、慣れておいしさを感じるとその味にハマル傾向が強いものです。 1980年代にコカコーラで「ダイエットコーク」を新発売し消費者の支持を得られなかったのも、消費者がこれまでの「コカコーラ」の味覚体験を基準に新商品を評価(これはコカコーラではない!)したからに他なりません。

長い年月をかけて作られてきた日本人の「コカコーラ」の味への慣れを短期間で崩すのは簡単なことではありません。 各社新商品投入の際には「コカコーラ」も含め既存ブランドとの味覚テストはしているはずです。 対象となった消費者は客観的に「おいしい」「まずい」を判断するでしょうし、そして新発売となれば「新商品」という理由でトライアルユースは期待できます。 しかしリピートユースとなると味に慣れのある「コカコーラ」になってしまう消費が多いのではないでしょうか。

話を「キリン メッツ コーラ」に戻しましょう。 健康志向の高まりから「食事の際に脂肪の吸収を抑える」特定保健用食品であることに魅力を感じる消費者は多いはずです。 「健康にいい」と言う価値が「コカコーラへの味への慣れ」を超えるものかどうかが、そのような消費者がどのくらいいるかがポイントになって来ます。

ちなみに私の場合、糖類以外の甘味料の味に敏感で受け付けないため、リピートユースはやはり「コカコーラ」にります。

カフェインレス ワンダ アイムフリー

先月アサヒ飲料社からカフェインレス缶コーヒー「ワンダ アイムフリー ブラック」「ワンダ アイムフリー ラテ」が発売されました。 早速両方飲んでみましたが、カフェインレスということでこれまでの缶コーヒーと違ってコクがないのではという心配とは裏腹に両商品それぞれのおいしさを感じました。

今回の商品を知って興味を持った点があります。 それは「アイムフリー」というネーミングに象徴される商品コンセプトです。

ニュースリリースでは以下のように書かれています。

ネーミングは、商品特長の「カフェインレス」であること、「あらゆるシーンで飲用できる缶コーヒーの新スタイル」であることを“フリー”という言葉を使って表現しました。(アサヒ飲料ニュースリリースより引用)

アサヒ飲料社は飲用シーンを訴求した「朝専用 ワンダ モーニングショット」で大成功を収めていますが、今回は飲用シーンを限定していません。
「ワンダ モーニングショット」は朝専用と差別化して朝の飲用市場だけをターゲットにしたわけではなく、差別化でトライアルユースを促進して朝以外の飲用シーンでリピート飲用されるようになったことが成功した理由だと思います。 その成功事例を応用すれば「夜専用 ワンダ ナイトショット」はなかったのでしょうか。

私の周りでも「興奮して眠れないと困るからコーヒーは夜は飲まない」という声が良く聞かれます。 そのようなターゲットに対して「夜でも安心して飲める」というベネフィットは存在しますので、 カフェインレスという機能面でのエビデンス(裏付け)があるのですから、そのベネフィットはより強化され競合品と比べての明確な差別化になるはずです。
そしてモーニングショットと同じようにトライアルでおいしさを感じればリピートに繋がり夜以外でも飲む消費者は多くなるのでは。

アサヒ飲料社の開発担当者の間でこのような考えがないはずはなく、別の理由で今の商品コンセプトになっていると思いますが、ニュースリリースでは残念ながらそれが判りません。

事実はともかく、他社の新商品が出たときに「自分ならこう考える、こうする」という意見を社内で交わすことも新製品・新商品開発にとってはとても大事なことではないでしょうか。

ノンアルコールビールの差別化競争

これからの季節、さらにビールがおいしくなります。

そして市場自体はまだまだ小さいもののビールの代替飲料としてノンアルコールビールの伸びが目覚ましいようです。
「ノンアルコールビール」とはアルコールを含まないビールのことであるが今はアルコール度数1%未満のものを含めて「ビールテイスト飲料」と呼んでいます。
ご存知の方も多いと思いますが、アルコール度数1%未満の飲料は酒類にはならず清涼飲料になります。 そのため酒税もかからないし、酒類の販売免許を持たない店舗でも販売が出来るのです。

ノンアルコールビールのブームは2003年の道路交通法改正に伴い飲酒運転罰則強化されたことが契機になっています。 それまでも輸入、国産を含めビールテイスト飲料は国内で販売されていたが大手ビール4社では販売していませんでした。

道路交通法の改正を翌年に控えた2002年の11月にサントリー社が「サントリー ファインブリュー」で市場参入し、12月にはサッポロビール社が「サッポロ スーパークリア」翌2003年5月にキリンビール社が「キリン モルトスカッシュ」で追随、 この3商品のアルコール度数は0.5%となぜか横並びとなっていましたが、最後発でアサヒビール社が11月にアルコール度数0.1%と差別化した「アサヒ ポイントワン」で参入し大手ビール4社のビールテイスト飲料の差別化競争が始ままりました。
この時点での各社の訴求ポイントは「味わいはビールに近くアルコールが1%未満のビール代替飲料」という点では共通していました。
本年は「飲んでも酒気帯びにならない」というところにあったことは開発経緯から明らかですが「きちんと量を守れば法律違反にはなりません」とは訴求できないようですね。 法律違反にはならなくても個人差によって酔った時の状態は異なるわけで飲むことで事故に繋がる可能性が高くなります。

この頃私はアサヒビールグループのインターネット管理運営会社に籍を置いておいていたのですが、開発担当者が発売直前の「アサヒ ポイントワン」を私のところに持ってきました。 彼はウイスキーの新製品・新商品開発もしていたことがあって古くからよく知っている後輩になるのですが、そのような関係もあって商品を見るなり唐突に「ゼロなら良かったのに」と言いました。 彼もそれは十分承知していて「アルコールを限りなくゼロに近づければ近づけるほどこれまでのビールとは味が離れてしまうので試行錯誤の結果0.1にしました」という答えが返ってきました。
「ポイントワン」というネーミングは先行競合品との差別化を考えてのことだと思いますが「私はほとんど嘘はつきません」と「私は絶対嘘はつきません」の違いと同じで、消費者が抱く印象は全く異なり差別化としては雲泥の差となります。 わずか0.1%しかアルコールが入っていなくても「酔わないビール」「飲んでも車の運転ができます」などの訴求ができないわけです。 もちろん彼を責めたわけではなく、アサヒビールほどの技術力がありながら先行競合品から約1年の歳月を費やして開発した商品ですので、その時点では最善の策だったと思います。 アルコール0.1%と言う差別化が功を奏したかどうかは定かではありません。

各社がテレビ宣伝も行い、話題にもなったため市場全体で250万ケースになりましたが、アルコールが微量でも入っているということから本来の「酔わない」という商品コンセプトを訴求できず、その後横ばいからやや衰退の流れとなって行きました。

2009年4月にキリンビール社がアルコール分0%の「キリン フリー」を新発売して話題となり、9月にアサヒビール社が「アサヒ ポイントゼロ」を新発売、9月にサッポロビール社が「サッポロ スーパークリア」のリニューアル、翌年4月にサントリー社が「サントリー ファインゼロ」を新発売しました。 「キリン フリー」「アサヒ ポイントゼロ」「サントリー ファインゼロ」の商品コンセプトは従来と同じ「味わいがビールに近くアルコール分ゼロ」でしたがここでは「サッポロ スーパークリア」が差別化を仕掛けています。

「サッポロ スーパークリア」は広報リリースで「中味は、麦芽エキスを最適な比率で配合することで雑味を低減し、商品名の通り、一層“スーパークリア”な爽快な味わいに仕上げました。さらに、お客様の健康志向が高まるなか、従来品より糖質をおさえ、カロリーも100mlあたり6キロカロリーと約37%オフ。いろいろな食事にも安心して合わせてお楽しみいただけます」「原材料 水溶性食物繊維、糖類(水飴、果糖ぶどう糖液糖)、麦芽エキス、香料、カラメル色素、酸味料、酸化防止剤(ビタミンC)」 となっています。
アルコールは他の3ブランドと同じゼロですが、原料はこれまでのビールで使われてきた麦芽、ホップを使用しないことで新しい味わいを訴求し、それに加え抵糖質、低カロリー、食物繊維といった機能性の訴求で差別化をしています。

「サッポロ スーパークリア」の差別化が功を奏したかは定かではありませんが「アルコールゼロ ビールテイスト飲料」カテゴリーは2009年約500万ケース、2010年約1,000万ケースと大きな伸びを示すことになります。

これで差別化競争は終わったわけでなく、今もなお続いています。

キリンビール社は2010年4月に「キリン 休む日のAlc0.00%」。 しじみに多く含まれる成分「回復系アミノ酸オルニチン」を400mgを含むビールを楽しむ感覚の休肝ノンアルコール飲料。

サントリー社は2010年8月に「サントリー オールフリー」。 「アルコール度数 0.00%」「カロリーゼロ」さらに「糖質ゼロ」。

アサヒビール社は2010年8月に「アサヒ ダブルゼロ」。 「アルコールゼロ」に加え「カロリーゼロ」。

サッポロビール社は2011年3月に「サッポロ プレミアムアルコールフリー」 この商品は上記3ブランドのような機能性訴求はありませんが、前述の「サッポロ スーパークリア」と全く逆に麦芽、ホップの使用によるビールにより近い味わいを訴求している点が特徴。

このようにビール各社は知恵を絞り、技術力を駆使して独自性を打ち出した商品を市場に導入してます。