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食品の基本的価値をつくるのは新製品開発

日本においては「新製品開発」と「新商品開発」の二つの言葉が混在しています。
食品においては「新商品開発」を使うことが多いようです。

この二つの言葉の違いは「製品」と「商品」ですが、「製品」と「商品」の意味の違いはご存知ですか?
「製品」とは文字通り製造されたもの、「商品」とは製品を商いに適した状態になったものです。
英語では「製品」も「商品」も「Product」で表していますが、日本語の「製品」と「商品」の区別は「新製品・新商品開発プロセス」を考える上でとても都合がいいのです。

食品は原材料、加工法で基本的な属性が出来上がりますが、この段階が「製品」の完成になります。
しかし製品のままではそれがどのようなものか消費者には伝わりませんので、おいしいそう、体に良さそうなど、より魅力的なものにするためにブランド名を付け、パッケージに入れ、キャッチコピーを付けたりして売れるようになった「商品」にします。

レストランのシェフの新メニュー開発を例にして、もう少し具体的に説明します。

一、素材を選ぶ(原材料)
一、素材を生かした調理方法を工夫する(加工方法・特徴のある味わい)
この新らしい料理を開発するプロセスで料理の基本的な価値が生み出されます。

他のスタッフの賄いとするのであればフライパンなどに入れたまま「勝手に自分たちでよそって食べなさい」で済みますが、お客様に提供する、商売にしようとなるとそういうわけにはいきません。

お客様に料理をさらに魅力的なものと思ってもらうため、喜んでもらうため、そしてお金をいただくために
一、この料理を引き立てるためのお皿を選ぶ(パッケージ)
一、料理に名前をつける(ネーミング)
一、メニューへの説明分を考える(キャッチコピー)
この魅力を高めるプロセスを経ることで、料理はお客様に注文してもらえるようになります。

食品業界において前段の料理の開発プロセスが「新製品開発」、後段の魅力を高めるプロセスが「商品化(=商品開発)」、その二つのプロセスを経て「新製品・新商品開発」の完成になるのです。

上の事例では最初から最後まで一人で行っているシェフの頭には新しい料理のコンセプトがあるために一人ですべてを対応し、ぶれることがないのでコンセプトの明文化も必要ありません。
多くの食品メーカーでは、新製品開発と商品化(主にマーケティング部が多いのでしょうか)は部門に分かれていますので商品コンセプトの創造が欠かせないことは言うまでもありません。

食品メーカーでは「新商品開発)」と一括りにしていることが多いようですが、
「新商品開発」は「新製品開発」と「商品化(=商品開発)」のプロセスで成り立っている。
このことに気付くか否かで新製品・新商品開発のプロセスの効率が大きく向上します。

新製品・新商品開発に必要なサイエンスとアートの融合

サイト内にも書いていますが「新製品・新商品開発」のプロセスは「モノづくり(=新製品開発)」と「新商品開発(=商品化)」で構成されます。

多くの企業で
「新製品開発」は理系のスタッフが「論理的発想」で研究・開発をすすめて「機能的価値」を生み出しています。
一方、ネーミング、パッケージデザイン、キャッチコピーなどの「商品化」は文系のスタッフが「感性的発想」で商品化をすすめて「情緒的価値」を生み出しています。

どちらがいい悪いではなく、論理的発想には法則性があり、感性的発想にはそれがありません。
最近ビジネスの世界で「サイエンス」「アート」ということばがよく使われますが、前者のような取り組み内容が「サイエンス」後者のような取り組み内容が「アート」です。

聞いたことがある方も多いと思いますが
「雪が解けると何になる?」という質問に、「水」という答えが「サイエンス」の世界、「春」という答えが「アート」の世界です。

「機能的価値」でターゲットの心を動かし、「情緒的価値」で商品を購入してもらう。
「情緒的価値」で ターゲットの心を動かし、「機能的価値」で商品を購入してもらう。
今の時代の消費者は「理性」と「感性」の両方で心を動かされる商品でないと買う気になってくれません。

ヒット商品をつくるには、合理的なサイエンスと人間的、属人的なアート、科学合理性と人間的知恵をうまく組み合わせることが大切です。

新製品・新商品アイデアはどうしたら生まれるのか

突然数式が出て驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
中学校で習う二次方程式の公式です。

二次方程式では、まず「問題」がありそれがいくつかのプロセス(青字部分)を経て「公式」が出来ます。
新製品・新商品アイデアが生まれる流れも「課題」→「プロセス=(思考、工夫)」→「解決策」もこの二次方程式の公式までの流れと同じです。
数学では公式があれば問題は簡単に解けますが、市場における各企業の状況が異なるマーケティングでは「課題」は同じでも絶対的な「解」は存在しません。

新製品アイデア、新商品アイデアを考えるにあたってマーケティング理論、成功事例を参考にしている場合があると思います。
そのこと自体は悪いことではないのですが、「解」だけをいくら集めたところでアイデアは生まれません。
多くの場合、ある一つの「解」に過ぎないのですから。
その「解」はどうしてそうなるのか、そのプロセスを自分の頭で考えることが大切です。

つまり、結果としての「マーケティング理論」「成功事例」そのものを知識とするだけでなく、そこに至るまでの「プロセス」を理解しそれを知識とすることが必要です。
プロセス=(思考、工夫)は応用が効きますので、自社にあった解決策、自社の状況に応じた製品アイデア、商品アイデアが生まれます。

「アイデアのひらめき」は何もないところからは決して生まれません。
頭の中にある異なるプロセスがある時つながりを持った時に「ひらめき」あってアイデアが生まれるのです。
認知心理学では「創造とは、知識のないところから突然生まれるのではなく、過去にある知識を組み合わせる技術」と言われています。
必要なのは知識より思考力なのですね。

どうしたら売上が上がるかを考えている限り製品アイデア、商品アイデアは生まれません。
自社の状況と自分を含めた消費者心理を頭に置き、「どうしたらもっとお客様に喜んでもらえるか」を考え抜くことでアイデアが浮かんできます。

毎月開催している食品新製品・新商品 実践セミナーでは、参加者の方が魅力的なアイデアを生み出せるようになることを目的に、事例とそのプロセスを具体的かつより深くお伝えしています。
ご興味をお持ちになられましたら是非ご参加ください。

新製品・新商品開発の目的は新たな価値をつくること

売り上げを向上させることを目的にして新製品・新商品開発に取り組んでいませんか?
今の時代のマーケティングは、つくった商品をいかに売るかから、消費者が買いたくなる仕組みをどのようにつくるかに変わってきています。
消費者が関心があるのは商品そのものではなく、その商品が自分にとってどのな価値、恩恵(消費者からみるとベネフィット)があるかということなのです。

私がニッカウヰスキーに在籍していた時に体験した事例を紹介しましょう。
今から23年ほど前に酒税法の改正があり、それまでアルコール37%未満のウイスキーはすべて37%の酒税がかかっていたのですがアルコール度数8%から12%の範囲に限ってアルコール度数に応じて酒税が低減されることになったのです。
それまではアルコール37%のウイスキーでもアルコール8%の水割りウイスキーでも容量当たりの酒税は同じ金額だったのですが、酒税法の改正によりアルコール8%の水割りウイスキーは37分の8に酒税が下がることになりました。
当時多くの消費者はウイスキーを水割りで飲んでいましたので、缶に入れていつでもどこでも飲めるようになればウイスキーの消費は大きく増えるものと業界、社内ではウイスキーブームの再来を期待しました。

早速私に新製品・新商品開発の指示が出たのですが、製品はウイスキーを水割りにしたものと決まっているわけですからやることとしては缶の容量、ネーミング、価格設定、キャッチコピーなどの検討ぐらいしかありません。
それらの検討をしながら「本当に水割りウイスキーは売れるのか」という疑問が沸いてきました。
一人の部下と一緒にウイスキーに対するウイスキーユーザーの価値観、嗜好性、飲まれるシーンなどをマトリクスにして検討したのですが買ってもらえる理由が見つからないのです。
その原因としては
一、ウイスキーはモノではなくウイスキーを飲むという「かっこよさ」「やすらぎの演出」などのコトで飲まれているので氷が入っていないグラスと比較して缶入りで飲まれることは少ない
一、ウイスキーユーザーは家にウイスキーが置いてあり、グラスにウイスキーを注いで冷蔵庫から氷を取っだし水を加えるのは面倒なことではなく割高の缶入りウイスキーを飲むケースは少ない
一、ウイスキーユーザーは自分のウイスキーの濃さの好みがあるので8%と決まった度数では満足しない
一、あるとすれば出張、旅行中に駅の売店で購入して飲むことだが、ウイスキーにははやすらぎという価値があるので行動中に飲まれるケースは少ない

最終的にウイスキーブームの再来を期待していた多くの意見に従わざるを得ず発売することになりましたが水割りウイスキーを市場に投入したサントリー社、ニッカ社とも成果を上げることは出来ませんでした。
「多くの人がウイスキーを水割りで飲んでいるので水割りにしたウイスキーを缶に入れた商品は売れる」
「これまでなかった差別化された商品だから売れる」
という意見は一見正論のように思ってしまいますが、深く考えると価値を提供できていなかったのです。

消費者の心理を理解し、自分自身もその立場になって考え、ターゲット層に受け入れられる価値をつくり出すことが新製品・新商品開発の目的であり、その結果として売り上げの向上があると考えて新製品・新商品開発に取り組むことが大切です。

飲食シーン、利用シーンをターゲットにする

ターゲット設定というと多くの方は「誰に」と考えがちです。
デモグラフィック(人口統計分布)とサイコロジック(心理的変数)で消費者を分類することも大切ですが、飲食シーン、利用シーンをターゲットにすることも必要です。

飲食シーンでは
一人で食べるのかみんなで食べるのか
ごはんのおかずのおかずで食べるのか、酒のつまみで食べるのか
朝に食べるのか、昼に食べるのか、夜に食べるのかなど
飲食シーンの違いで商品サイズ、味わい、キャッチコピーが違ってきます。

また利用シーンでは
プレゼントに利用するのか
観光みやげにするのか
ノベルティに使うのかなど
利用シーンの違いでやはり製品設計、商品設計が変わってきます。

いくつか事例を紹介します。

カルビーの「フルーツグラノーラ」
1991年発売と言いますから商品としてはロングセラーですが一時伸び悩んでいました。
カルビー社は、1911年ごろに朝食を別々にとる家族が増えてきて簡便に済ませたいというニースがあることに気づき、朝食市場にターゲットを絞ったのです。
その結果40億円ほどの売り上げが3年後の2014年には140億円を超えるまでになっています。

アサヒ飲料の「ワンダ モーニングショット」
それまでにもコーヒー飲料を出していましたが、午前中に缶コーヒーを飲用するボリュームが全体の約4割以上を占めることが調査結果で解り、その市場でトップシェアを取ることを目標に2002年に「朝専用缶コーヒー」を発売します。
研究所や新製品・新商品開発部署では中身の差別化を図ったと思いますが機能的訴求はほとんどなく「朝専用」という訴求と広告宣伝で発売年には400万ケースを販売し、今では他のWANDAブランドも含め4,000万ケースに達しています。
「朝専用」だけでこれだけヒットすることに疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、機能的に差別化がくて商品の選択に迷う場合にシーンを限定されることで「無駄な悩みを避け軽い気持ちで選択する」という消費者心理によるものと私は思います。

他にもまだいろいろなシーンでニーズは存在するのではないでしょうか?
外国人観光客の増加により新しいシーンも出来てきています。
このように飲食シーン、利用シーンを絞り込んで新製品・新商品開発、マーケティングを進めることも必要です。

新製品・新商品開発における市場のセグメンテーション

セグメンテーションとは、共通する特質を基準に不特定多数の人々を分類する 市場細分化のことことです。
その結果出来たいくつからのグループの中かから、自社の強み、新しいアイデアを発揮出来るグループを選択しターゲットとします。
万人に自社商品を買ってもらいたいという気持ちは誰でも持ちますが、商品が他の競合商品との差別化が出来ませんので競争関係が激しい今の食品業界では効率的ではありません。

セグメンテーションはいくつかありますが、マーケティングでよく使われるのがデモグラフィック(人口統計分布)とサイコグラフィック(心理的変数)の二つです。

デモグラフィックでは年齢や性別、家族構成や職表、社会的な階層がその変数になります。
どんなに魅力的は商品をつくり出してもその存在を知ってもらわなくては売れることはありません。
この分類は昔から宣伝広告効果の最大化を目的としてよく使われてきています。
例えば、深夜のニース番組は中年サラリーマンの視聴率が高く、バラエテティー番組は若者の視聴率が高かったりしますので年代でセグメンテーションしてターゲットを設定します。。
このように宣伝広告に効果のあるセグメンテーションでも新製品・新商品開発におけるセグメンテーションにはあまり向いていません。

最近ハ新製品・新商品開発で必要なセグメンテーションはサイコグラフィックと言われ、価値観、嗜好性、ライフスタイル、性格などが変数になります。
価値観が多様化している今の時代は年代で分類することは難しいと言わざるを得ません。
消費者志向といいますが、常に消費者の気持ちを考え、消費者心理を理解することが欠かせません。

私は新製品・新商品開発をするにあたってもう一つのセグメンテーションを採用します。
それはシーン(場面)での分類です。
新製品・新商品開発のお手伝いをしていると、完成した製品を開発会議や経営会議などで試食、試飲する場面に出会います。
小さなカップを使った試飲や少量を口にするだけの試食で「もっと味わいはしっかりさせた方がいい」「味にインパクトが欲しい」という意見が出て担当者は品質設計をやり直すことがあります。

ポカリスエットの開発にあたって話ですが、二つのタイプの試作品もって研究所の何人かで山登りをして汗をかいたところで試作品を飲み比べました。
その時全員が薄い味わいの試作品の方を「ごくごく飲めておいしい」と評価しました。
それを社内で提案したところ「まずい」「これじゃ売れない」という意見が圧倒的だったのですが、社長の「汗をかいた後に飲めば、きっと理解してもらえるはず」発言でポカリスエットの味が決まったという有名な話があります。
飲料だけではなく、例えば干物、お酒のつまみにする場合とごはんのおかずにする場合とでは塩味の強弱などの味付けを変えた方が売れるのではないでしょうか。

「どんな人に飲んでもらうか」という人のターゲット設定に加えて、「どんな場面で飲み、食べるのか」というシーンのターゲット設定が必要な場合が多くあると思います。

ヒット商品をつくる三つのベネフィット

ベネフィットとは、消費者が商品やサービスを購入使用することによって得られる利益、効用、平たく言えば「得した」「嬉しい」と思う気持ちを持つ要素のことです。
私も含め人間は良くも悪くも貪欲ですから、少しでも自分にとって得するものを求めるのは必然であり、買ってもらえる商品、利用してもらえるサービスにはベネフィットは欠かせません。

ベネフィットを以下の三つ「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」に分類すると解りやすくなります。
食品でベネフィットにつながる主な要素を考えてみましょう。
【機能的ベネフィット】
おいしい、安い、健康にいい、簡単につくれる など
【情緒的ベネフィット】
新しい、安心できる、高級感がある、希少性がある、話題性がある など
【自己表現ベネフィット】
こだわりを示せる、自慢できる、自分のライフスタイルを誇示できる など

いかがでしょう。
皆さんも消費者としてこのようなベネフィットから商品の購入をしているのではありませんか?
にもかかわらず、食品メーカーの多くは機能性ベネフィットの訴求はされてますが、情緒的ベネフィット、自己表現ベネフィットの訴求までしているところはまだまだ少ないようです。

私が子供のころに初めてコカ・コーラを飲んだ時「なんてまずいのだろう」と思いました。
三ツ矢サイダー、バヤリースオレンジの方がよっぽどおいしく感じていました。
私の記憶の中にはコカ・コーラの機能性ベネフィットの訴求はなく、あるのは「スカッとさわやか、コカ・コーラ」のキャッチコピーでこれは情緒的ベネフィットの訴求です。
同じような情緒的ベネフィットの訴求で成功した事例としてはビールのスーパードライがあります。
機能性ベネフィットの訴求もしながらテレビコマーシャルではスポーツシーンなど活動的なライフスタイルの訴求で成功を収めています。
自己表現ベネフィットの訴求としては、ネッスル社が1980年代に「違いがわかる男の、ゴールドブレンド」のキャッチコピーと共に各界著名人を起用してブランドイメージの高級感を醸成させています。

三つのベネフィットの違いを理解してもらうために事例を挙げてみましtが、どれも一つのベネフィットだけでなく機能性ベネフィット、情緒的ベネフィット、自己表現ベネフィット、三つのベネフィットを強弱をつけてうまく組み合わせていることは言うまでもありません。

中堅、中小食品メーカーの皆さんにとっては「大量宣伝が出来る大手企業ならではのこと自分たちには関係ない」と思われるかもしれませんがネット社会の今の時代、決して無理な話ではありません。
前回のブログでも書きましたが、差別化された特徴のある商品を開発し、最初は機能性ベネフィットだけの訴求でもそれがネットで話題となり、マスコミで取り上げあられ、さらにネットで話題になることで「話題の商品を食べてみたい」という情緒的ベネフィットを持つ消費者が増えヒット商品となり、いずれブランド商品になる、実際に規模の大小はあるもののそのような商品が多くみられるようになってきています。

ターゲット設定から始める新製品・新商品開発

前回のブログで「ベネフィット」について書きました。
メーカーがどんなに価値ある商品をつくってもそれをベネフィットとして享受する人がいる反面、全くベネフィットとしない消費者も存在します。
ある商品においてすべての消費者にベネフィットを享受してもらうことは事実上、不可能なのです。
そしてその商品にベネフィットを持つターゲットを設定して、何を行ない、何を行なわないかという、商品展開のための戦略を策定していく必要があります。

日本のように市場が飽和した状態では他社のブランドのシェアを奪わない限り自社の成長は期待できないため、新商品の市場導入は欠かすことが出来ません。
その時自社内の商品を対象にして新商品を開発しても単なる独りよがりで、他社ブランドの顧客は新商品に興味を持ってくれません。
「今回の商品はこのような素材を使って、このような作り方をして、これまで市場にある商品とはこのように違います。そしてこれを食べることでこんないいことがありますよ」と訴求して他社ブランドの顧客のブランドスイッチを促進しなくてはなりません。

既存市場にどのような嗜好、価値観、不満点を持った消費者(ターゲット層)がいるかを考え、その人たちにどのようなベネフィットを訴えかけるかを明確にして商品を考える方がマーケティング上効率的になるではないでしょうか。
もちろん、研究開発部門で画期的な製品が開発された場合はその逆の流れになります。

ターゲット設定に当たっては、限度はありますが層の規模が小さくても心配いりません。
規模が小さいほうが、ベネフィットならびにその元になる価値は差別化され独創的で話題性のあるものになります。
以前は大手メーカーがマスメディアを使った大量宣伝で新商品訴求をしてくるため中堅、中小企業は対抗しにくい状況にありました。
しかしネット社会になって消費者の間のベネフィット共感の伝播が見られ、SNSなどで話題になるとマスメディアがそれを取り上げ、それがまた消費者間の共感をさらに高めヒット商品につながるというが顕著です。
この現象がいつか終わってしまうのか、それともさらに広まってくのかは定かではありませんが、この現象をうまく利用することが、今の時代、大手、中小にかかわらずヒット商品を生み出す重要なマーケティング施策の一つのような気がします。

新製品・新商品開発における価値とベネフィット

近年、大手企業をはじめとして今後の商品における「価値の向上」「価値の差別化」への対応が表明されてきています。
今回のブログでは「価値」について考察してみました。

「価値」とは
物がもっている,何らかの目的実現に役立つ性質や程度。値打ち。有用性。 (大辞林より引用)
哲学、経済分野では別の意味もありますが、新製品・新商品開発における「価値」の意味はこれでいいと思います。
冒頭にあげた「価値の向上」「価値の差別化」にある「価値」もこの意味で使われています。

一方、マーケティングでは「価値」に近い意味で「ベネフィット」という言葉がよくつかわれますが、価値とベネフィットの違いはご存知ですか?

「ベネフィット」の意味は
利益、ためになること [もの] (研究社 新英和中辞典)
「価値」は価値を感じる人がいて初めて意味を持ちますが、ある人にとって価値あるものでも、他の人にとってそうではない場合もあります。
「ベネフィット」はある人たち(=特定のターゲット)が何かしらかの恩恵を受ける要素のことです。

「価値」はプロダクトアウト的で「ベネフィット」はマーケットイン的と言えます。
本来は「ベネフィットの向上」「ベネフィットの差別化」とした方が適切ですが、「ベネフィット」という言葉が一般的ではないために解りやすさから「価値」という文言を使っているのでしょう。

新製品・新商品開発においては「どのような人たちにどのようなベネフィットを提供するのか」、つまりターゲットを明確にしてその人たちの心を動かし満たす要素は何かを明確にした商品コンセプトが欠かせません。

新製品・新商品開発における顧客志向の取り入れ方

企業におけるマーケティング活動の目的は「利益を上げ、社会に役立つこと」です。
モノ不足の時代にはモノづくり偏重(プロダクトアウト)で多くの商品を効率よく生産して市場に供給することで目的は達成できました。
しかし市場が飽和し、シェア争いとなっている今の時代、消費者の心を動かし、心を満たす商品で他企業商品からのブランドスイッチで利益を上げることが必要になってきます。
それを実現する手段の一つに「顧客志向(顧客第一主義、消費者志向、お客様本位・・・)があります。
「顧客志向」は利益を上げるための手段であり、目的ではありません。
企業の経営理念に「顧客志向」という文言がよく出てきますが、よくよく考えると経営理念にあるのはおかしく事業方針、行動基準にあるべきなのでしょうね。

顧客志向のマーケティング施策への問題点として、顧客の要望ばかりを取り入れて新製品・新商品開発をしていくとアイテム数が膨大になってしまいマーケティングコストが上がって利益が低下してしまうことが指摘されています。
やみくもに顧客の要望を取り込むのではなく、マーケティング戦略をきちんと構築し、それをもとに顧客の要望を取捨選択することが必要です。

では顧客志向をどのように実行していけばいいのでしょうか?
「顧客志向」マーケティングにおけるすべてのプロセスで効果があるものですが、ここでは新製品・新商品開発における「顧客志向」を考えてみましょう。

まず「顧客志向」で新製品・新商品開発を進めるにあたっては顧客を知らなくてはなりません。
だからといって消費者調査をして顧客のニーズを集めて、それを整理しただけで顧客にとって魅力的な製品を生み出すことは出来ません。
その理由は、そのようにして集めた顕在的なニーズはすでに競合他社でも把握している可能性があり、また、潜在的なニーズは顧客自身さえ意識していないため、新規性のあるニーズが語られていない可能性があります。
一つの方法として、新製品開発、新製品・新商品開発者自身が購入者の立場で店頭に行って買い物をし、なぜそれを手にしたのか、なぜそれを手にしなかったのかを考えてみることです。
特売品になぜ魅力を感じたのか、賞味期限切れ間近の値下げ商品を手にしたのか、牛乳パックの棚の奥のほうのものを手にしたその時の心理はどんなものだったか、パッケージのどこに心を動かされてその商品を手にしたのか・・・
一朝一夕には難しいですが、考えることを繰り返すことで思考スキルが向上していくことは間違いありません。
参入市場の情報は収集した、顧客のニーズも調査した、それだけでは魅力ある新商品は誕生しません。
それらの情報の意味合い考え、持っている知識と組み合わせて創造的発想をしていくことが必要です。

実際にあった事例を紹介します。
そのメーカーは過去に冷凍コロッケを製造販売しており再開の検討をするにあたって主婦を対象としたヒヤリングを行いました。
昔は肉屋さんの店頭で販売されていましたが今はコンビニ、スーパーでの揚げたてコロッケの販売が主流です。
そこで購入している理由は
1. 家で揚げ物をすると後の片付けが大変。
2. 冷凍コロッケは自分で揚げると爆発しやすい。
3. コンビニで揚げたてのコロッケが簡単に買える。
4. 子供のおやつにちょうどいい。
このような状況では冷凍コロッケの再開は難しいと考えるのが普通です。
または、コンビニ向けに低価格の冷凍コロッケにしたらと考えます。
しかし「4. 子供のおやつにちょうどいい」という意見からコンビニのコロッケは「おやつコロッケ」で夕飯のおかずにはなっていないのではないか?
その理由は「手抜きによる後ろめたさ」にあるのではないかという仮説が生まれました。
直接「コンビニコロッケは料理の手抜きで後ろめたいとおもいますか?」と聞いてみると多くの主婦から「言われてみるとそんなところがある」との答えが返ってきました。
実際に夕飯のおかずにする主婦もいましたが、料理好きの主婦ほど夕飯のおかずにはしていないということがわかりました。
「手抜きによる後ろめたさ」は主婦の回答には出てきませんでしたが当人が気が付かない潜在意識には存在していたのです。
低価格の冷凍コロッケをつくるか、夕飯のおかずになる高級冷凍コロッケを作るか、皆さんならどちらを選択しますか?
後者を選択して、どのようなコロッケなら魅力的で夕飯のおかずになるかを考えてつくりだすこと、それが独自性のある差別化されたお客様に買ってもらえる商品になるのではないでしょうか?