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カフェインレス ワンダ アイムフリー

先月アサヒ飲料社からカフェインレス缶コーヒー「ワンダ アイムフリー ブラック」「ワンダ アイムフリー ラテ」が発売されました。 早速両方飲んでみましたが、カフェインレスということでこれまでの缶コーヒーと違ってコクがないのではという心配とは裏腹に両商品それぞれのおいしさを感じました。

今回の商品を知って興味を持った点があります。 それは「アイムフリー」というネーミングに象徴される商品コンセプトです。

ニュースリリースでは以下のように書かれています。

ネーミングは、商品特長の「カフェインレス」であること、「あらゆるシーンで飲用できる缶コーヒーの新スタイル」であることを“フリー”という言葉を使って表現しました。(アサヒ飲料ニュースリリースより引用)

アサヒ飲料社は飲用シーンを訴求した「朝専用 ワンダ モーニングショット」で大成功を収めていますが、今回は飲用シーンを限定していません。
「ワンダ モーニングショット」は朝専用と差別化して朝の飲用市場だけをターゲットにしたわけではなく、差別化でトライアルユースを促進して朝以外の飲用シーンでリピート飲用されるようになったことが成功した理由だと思います。 その成功事例を応用すれば「夜専用 ワンダ ナイトショット」はなかったのでしょうか。

私の周りでも「興奮して眠れないと困るからコーヒーは夜は飲まない」という声が良く聞かれます。 そのようなターゲットに対して「夜でも安心して飲める」というベネフィットは存在しますので、 カフェインレスという機能面でのエビデンス(裏付け)があるのですから、そのベネフィットはより強化され競合品と比べての明確な差別化になるはずです。
そしてモーニングショットと同じようにトライアルでおいしさを感じればリピートに繋がり夜以外でも飲む消費者は多くなるのでは。

アサヒ飲料社の開発担当者の間でこのような考えがないはずはなく、別の理由で今の商品コンセプトになっていると思いますが、ニュースリリースでは残念ながらそれが判りません。

事実はともかく、他社の新商品が出たときに「自分ならこう考える、こうする」という意見を社内で交わすことも新製品・新商品開発にとってはとても大事なことではないでしょうか。

ノンアルコールビールの差別化競争

これからの季節、さらにビールがおいしくなります。

そして市場自体はまだまだ小さいもののビールの代替飲料としてノンアルコールビールの伸びが目覚ましいようです。
「ノンアルコールビール」とはアルコールを含まないビールのことであるが今はアルコール度数1%未満のものを含めて「ビールテイスト飲料」と呼んでいます。
ご存知の方も多いと思いますが、アルコール度数1%未満の飲料は酒類にはならず清涼飲料になります。 そのため酒税もかからないし、酒類の販売免許を持たない店舗でも販売が出来るのです。

ノンアルコールビールのブームは2003年の道路交通法改正に伴い飲酒運転罰則強化されたことが契機になっています。 それまでも輸入、国産を含めビールテイスト飲料は国内で販売されていたが大手ビール4社では販売していませんでした。

道路交通法の改正を翌年に控えた2002年の11月にサントリー社が「サントリー ファインブリュー」で市場参入し、12月にはサッポロビール社が「サッポロ スーパークリア」翌2003年5月にキリンビール社が「キリン モルトスカッシュ」で追随、 この3商品のアルコール度数は0.5%となぜか横並びとなっていましたが、最後発でアサヒビール社が11月にアルコール度数0.1%と差別化した「アサヒ ポイントワン」で参入し大手ビール4社のビールテイスト飲料の差別化競争が始ままりました。
この時点での各社の訴求ポイントは「味わいはビールに近くアルコールが1%未満のビール代替飲料」という点では共通していました。
本年は「飲んでも酒気帯びにならない」というところにあったことは開発経緯から明らかですが「きちんと量を守れば法律違反にはなりません」とは訴求できないようですね。 法律違反にはならなくても個人差によって酔った時の状態は異なるわけで飲むことで事故に繋がる可能性が高くなります。

この頃私はアサヒビールグループのインターネット管理運営会社に籍を置いておいていたのですが、開発担当者が発売直前の「アサヒ ポイントワン」を私のところに持ってきました。 彼はウイスキーの新製品・新商品開発もしていたことがあって古くからよく知っている後輩になるのですが、そのような関係もあって商品を見るなり唐突に「ゼロなら良かったのに」と言いました。 彼もそれは十分承知していて「アルコールを限りなくゼロに近づければ近づけるほどこれまでのビールとは味が離れてしまうので試行錯誤の結果0.1にしました」という答えが返ってきました。
「ポイントワン」というネーミングは先行競合品との差別化を考えてのことだと思いますが「私はほとんど嘘はつきません」と「私は絶対嘘はつきません」の違いと同じで、消費者が抱く印象は全く異なり差別化としては雲泥の差となります。 わずか0.1%しかアルコールが入っていなくても「酔わないビール」「飲んでも車の運転ができます」などの訴求ができないわけです。 もちろん彼を責めたわけではなく、アサヒビールほどの技術力がありながら先行競合品から約1年の歳月を費やして開発した商品ですので、その時点では最善の策だったと思います。 アルコール0.1%と言う差別化が功を奏したかどうかは定かではありません。

各社がテレビ宣伝も行い、話題にもなったため市場全体で250万ケースになりましたが、アルコールが微量でも入っているということから本来の「酔わない」という商品コンセプトを訴求できず、その後横ばいからやや衰退の流れとなって行きました。

2009年4月にキリンビール社がアルコール分0%の「キリン フリー」を新発売して話題となり、9月にアサヒビール社が「アサヒ ポイントゼロ」を新発売、9月にサッポロビール社が「サッポロ スーパークリア」のリニューアル、翌年4月にサントリー社が「サントリー ファインゼロ」を新発売しました。 「キリン フリー」「アサヒ ポイントゼロ」「サントリー ファインゼロ」の商品コンセプトは従来と同じ「味わいがビールに近くアルコール分ゼロ」でしたがここでは「サッポロ スーパークリア」が差別化を仕掛けています。

「サッポロ スーパークリア」は広報リリースで「中味は、麦芽エキスを最適な比率で配合することで雑味を低減し、商品名の通り、一層“スーパークリア”な爽快な味わいに仕上げました。さらに、お客様の健康志向が高まるなか、従来品より糖質をおさえ、カロリーも100mlあたり6キロカロリーと約37%オフ。いろいろな食事にも安心して合わせてお楽しみいただけます」「原材料 水溶性食物繊維、糖類(水飴、果糖ぶどう糖液糖)、麦芽エキス、香料、カラメル色素、酸味料、酸化防止剤(ビタミンC)」 となっています。
アルコールは他の3ブランドと同じゼロですが、原料はこれまでのビールで使われてきた麦芽、ホップを使用しないことで新しい味わいを訴求し、それに加え抵糖質、低カロリー、食物繊維といった機能性の訴求で差別化をしています。

「サッポロ スーパークリア」の差別化が功を奏したかは定かではありませんが「アルコールゼロ ビールテイスト飲料」カテゴリーは2009年約500万ケース、2010年約1,000万ケースと大きな伸びを示すことになります。

これで差別化競争は終わったわけでなく、今もなお続いています。

キリンビール社は2010年4月に「キリン 休む日のAlc0.00%」。 しじみに多く含まれる成分「回復系アミノ酸オルニチン」を400mgを含むビールを楽しむ感覚の休肝ノンアルコール飲料。

サントリー社は2010年8月に「サントリー オールフリー」。 「アルコール度数 0.00%」「カロリーゼロ」さらに「糖質ゼロ」。

アサヒビール社は2010年8月に「アサヒ ダブルゼロ」。 「アルコールゼロ」に加え「カロリーゼロ」。

サッポロビール社は2011年3月に「サッポロ プレミアムアルコールフリー」 この商品は上記3ブランドのような機能性訴求はありませんが、前述の「サッポロ スーパークリア」と全く逆に麦芽、ホップの使用によるビールにより近い味わいを訴求している点が特徴。

このようにビール各社は知恵を絞り、技術力を駆使して独自性を打ち出した商品を市場に導入してます。