食べるラー油のヒットから学ぶ新製品・新商品開発のヒント

momoya雑誌、サイト、ブログなどで「辛口ブーム」「内食の増加」「ネーミングの妙」など「食べるラー油がヒットした理由」が色々紹介されています。

ここでは、新製品・新商品開発に関係している一人として「ヒットした理由」という視点ではなく「何故このようなヒット商品が誕生したのか」という視点で考察した結果を書いて見ようと思います。

今回のようなラー油は中国では家庭でよく作られているそうで、 中国人の方が今から10年前ぐらいに石垣島に移り住み食堂を開き中国の自分の家庭で作っていたラー油を提供し、そのラー油の具材に島とうがらしなど地元の食材を使用したこともあって観光客に「石垣島みやげ」として人気が出ていました。 テレビで紹介されたりブログに取り上げられたりで徐々に多くの人に知られるようになりましたが、 この時点では野菜炒めなどのかけて食べるという調味料だったようです。

普通このような状況(一部で大きな話題にはなっていてもたくさん売れていない)で大手企業が参入することはまず考えられません。 これまで餃子をつけるのが主たる需要のラー油に「辛そうで辛くない少し辛いラー油」という名前をつけ、より大きいサイズの商品を発売しても売れるとは思えません。

結論が先になりますが「食べるラー油」はご飯にかけて食べる、つまり「このラー油をご飯にかけるとご飯がおいしく食べられますよ」という提案が消費者に受け入れられた結果ではないでしょうか。

潜在ニーズの開発です。 潜在ニーズというと心の奥底に潜んでいるニーズであり消費者が持っているものと思いがちですが、マーケティングでは「消費者ニーズとは生まれる可能性があるもので持っているものでは無い」という考えがあります。

桃屋社はご飯に乗せる食材の開発、製造、販売をしておりその分野での消費者動向の把握、チャネル対応、製造設備など十分な資源、つまり今回の商品に関しても会社としての強みがあったはずです。 その背景に基づく問題意識で消費動向、消費者行動を観察していたからこそ、それらの変化をいち早く捉える事が出来たのでしょう。 そして「食べるラー油」というコンセプトにすることで調味料であったラー油を自社の事業分野に持ち込み自社の強みを生かした新製品・新商品開発を進めました。

新発売後、予想を上回る人気となり品切れとなりますが、その時の品切れの謝罪広告がブームに更に拍車をかける結果になっています。 品切れはまさに怪我の功名だったのでしょう。 また、エスビー食品社などの追随が市場全体の盛り上がりを作り出してくれることにもなりました。

会社の強みがあって、それを背景にした問題意識が消費者の変化を捉え、自社の分野へ持ち込むコンセプトの開発をし、自社の強みを生かした魅力的な商品を作り出し、それに加え、品切れでブームに拍車がかかり、他社の追随で市場全体が盛り上がることで大ヒットになったと思います。

新製品・新商品開発で必要なものは「会社の強み」と「問題意識」と「創造力」 そして大ヒットするためには「時の運」が必要です。

【余談】 何故「ご飯にかける」という提案が生まれたのでしょうか? 消費者調査で判るとは思えないし、何故そのようなアイデアが生まれたのか色々調べてみました。

日本橋にある桃屋社の近くに10年前ぐらいから同じようなラー油を作ってお客様にサービスをしている中華料理店があり、何年か前からそのラー油をチャーハンやご飯にかけるお客様が増えてきていていたそうです。 近くの桃屋社の社員の人も出入りをしていてそのような状況を目にしていた可能性は考えられます。 推測にすぎませんがが、もしそうだとしたら「江戸むらさき」などご飯に乗せる商品の専門家である桃屋社だから、石垣島ラー油のブームと新製品・新商品開発の方向性がそこで結びついたとしても不思議ではありません。

そう言えば以前会社勤めしている時の話ですが、昼食で中華に行くと必ずチャーハンを注文してカウンターにある小さなスプーンのついたツボのような小さなガラス瓶に入った刻み唐辛子入りラー油をたっぷりかけて食べる部下がいました。 その分野の新製品・新商品開発はしていなかったので「エネルギッシュな奴だな」という感心だけでラー油をご飯にかける商品化のアイデアは思いつきませんでした。

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