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マーケティング論を忘れて街へ出よう

セミナーを受けたり、専門書を読んだりしてマーケティングの勉強をされた方は多いと思いますがそれが役に立っている人はどのくらいいるのでしょう。

私は、マーケティング理論を知っていることに越したことはありませんが、知らなくてもいいと思っています。

マーケティング理論の多くは大手企業の成功事例を後付で論理的に説明していることが多く、特に食品の中堅、中小企業においてはあまり役に立つとは思えません。
それよりも街に出て消費者の購買行動を観察したり、自分が生活者として実際に買い物をしたり料理をして消費者の購買心理を理解することが必要です。

もちろんセミナーや専門書でマーケティングを知るだけでなく、自分なりにその本質を考え、その考えを自社に応用することが出来ればいいのですが、ほとんどの人は知ることに集中して自分の頭で考えるということはしていないのではありませんか。

そしてその弊害は、マーケティングで使われている用語を共通言語のように口にすることです。
皆さんの周りにもそのような人はいませんか?
「マーケティング」「商品コンセプト」「イノベーション」「差別化」等々数え上げればきりがありませんが、これらを口にするだけで問題が解決することはありません。

大事なのは知ることより自分の頭で考えることではないでしょうか。

権威に弱い日本人ゆえの現象?

先日、加工食品中小企業のトップの方から「うちもモンドセレクションに応募して賞を取ろうと思うのだが」と言う相談を受けました。

モンドセレクションの実態を知っている私としてはどう答えていいのか迷いました。
何故なら、応募すれば金賞を取ることは難しくなくラベルにモンドセレクションのメダルを表示することで商品が権威づけされ(実際には消費者がそう錯覚するだけのケースが多いと思うのですが)売上げは上がると思います。
同じような商品が店頭に並んでいる場合には、モンドセレクションの何たるかを知らない多くの消費者はゴールドメダルの表示がある方を選択する可能性が高いのは当然のことです。
中小企業においては効果は大きいと私は思います。

しかし、モンドセレクションの受賞で本当に商品が権威づけされるのでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが、出品商品の格付けは相対評価ではなく絶対評価なため昨年の受賞結果を見ると3200強の出品商品で約2800商品が「Grand Gold Award」「Gold Award」「Silver Award」「Bronze Award」のどれかを取得しているのです。
お金を出して出品し、非常に高い確率で何らかの賞がもらえるのは適切な評価とは言えません。

それを承知で出品する日本の企業の商品は全出品数の5割から7割に達すると言われています。
モンドセレクションの是非を云々するつもりはありませんが、実態は権威に弱い日本の消費者に対しての販促ツールになっています。

しかも受賞した商品を製造販売している企業のホームページを見るとモンドセレクションのメダルを獲得したことで「世界に認められた」と結論づけているところもあります。
消費者の無知に付け込んだ明らかに詐称ではないでしょうか。

私が一番心配しているのは、マーケティング、新製品・新商品開発に携わる皆さんがこのような施策がマーケティングには大事だと誤解してしまうことです。

いつになったら日本に正常な食文化が出来るのでしょう。

見た目は「本物」、中身は「別物」

今週発売された週刊現代に食品のつくり方に関するスクープレポートが掲載されていました。
「安さを追求のためにひどい原料、様々な添加物を使ってコストを下げている」と言う内容で20の食品がやり玉に挙がっています。

一例を上げますと「チューブ入りわさび」は「本物のわさびの分量はごくわずかで、油、加工でんぷんが大半を占める。香料によってわさびの香りをつけ、人工甘味料で甘みを添加する。長期間腐らないのは、添加物が多いため」と書かれています。(週刊現代から原文のまま引用)

この真偽はともあれ「どこが悪いのかな」と言うのが私の正直な感想です。
やり玉に上がった20の食品は食品衛生法で安全と認められている原料、添加物を使用していることは間違いないはずです。
わさびの例で言えば、食品メーカーの研究開発の結果、安価にいつでも手軽においしく刺身が食べられるようになり、消費者がその価値に納得して買っているのでは購入しているのではないでしょうか。

食品業界にも技術革新がありますので、昔のまま、人工的に手を加えていないものが「本物」と決めつけるのはどなのでしょうね。

Caviaroliという商品をご存知ですか?
オリーブオイルをカプセルに詰めた食品で、「世界一レストラン」と言われるスペインにあるエル・ブジ(エル・ブリ)の総料理長フェラン・アドリアが来日した時に人工イクラの製造方法を知って開発したと言われています。
人工イクラはイミテーション商品として評判は良くなく今は見かけませんが、オリーブオイルカプセルは新しい食品として人気があるようです。
サラダ油とオリーブオイルの違いだけの製品が、商品コンセプトを変えることで全く違う商品になりました。

個人的には代替原料を使ったり添加物を使ったりする商品は好きではありません。
今の時代、そのような商品の逆を行く新製品・新商品開発の方が魅力があると思っています。

鉛は磨いても金にならない

食品においては「新商品開発」という言葉が一般的です。
日本語では「製品」と「商品」の概念がありますが英語では明確に区別されていません。
「製品」も「商品」もProduct、「新製品開発」も「新製品・新商品開発」もProduct developmentです。

私は特に食品においては新製品開発と新商品開発は別のものと考えています。
「日本の食品業界」と付け加えた方がいいのかもしれませんが。
そもそも新製品開発を行う部署と新商品開発を行う部署が異なりますし、それぞれの部署のスタッフに要求されるスキル、ノウハウも異なります。

多くの方は、お客様に価値のある製品の開発が必要だと承知はしていても、それが見つからないため新商品開発で魅力的な商品にしようと苦労しています。

価値のある製品でない限り、いくら商品化で努力しても限界があります。
価値のある製品が開発されても、商品化がきちんと出来なければお客様に買ってもらえる商品にはなりませんが。

他の製品より価値のある製品を開発し、その価値に磨きをかけてよりお客様の心を動かすようにすることが製品の商品化であり、その結果が成功する新製品・新商品開発になるものと思います。

新製品・新商品開発における「感性」とは

先週末に青森県主催の「新商品開発力強化支援事業成果報告会」なるものが開催され、出席してきました。

その会の後半に「デザイン産学官連携プログラム~大学生の感性を活用したデザイン支援~成果報告」というプログラムがあり、弘前大学の人文学部、教育学部の学生10チームによる報告がありました。
内容は青森県の工芸品を題材とした商品・デザイン企画」ですが、すでに市販されている商品ですのでそれらをどのようなパッケージ入れ、どのような販売促進を行うかというものでした。

報告の内容はともかく、タイトルにある「大学生の感性を活用」と言う点が気になりました。
若い人が持っているであろう(大人には持ちえない)物事の感じ方から新しい発想が生まれることを期待してのことでしょう。
企業でも学生に新商品開発に参加してもらうケースがありますが、その場における学生の価値観の違いが参考にはなって新商品開発に生かすことは出来ても、実際に学生が新商品開発まで行うのは無理があると思います。

この機会に「感性」の意味をあらためて調べてみましたが、正直なところ明確な意味の違いはわかりませんでした。
私は、「理性」は論理的思考で心が動くこと、「感性」は感覚的に心が動くことだと思っています。

消費者の「理性」と「感性」の両方に訴えるものでないと商品は買ってもらえません。
買ってもらえる商品をつくる新商品開発をするには、新製品開発レベルでは「理性」を働かせる必要性が高く、商品化レベルでは「感性」を働かせる必要性が高くなるのではないかと思います。

もちろん、「理性」「感性」の両方を兼ね備えて新製品・新商品開発にあたることが出来ればそれに越したことはありませんね。

高価格であること、それ自体が価値

消費者は高価格商品に対して価値を感じます。
価値を期待すると言った方が正確かもしれません。
食品の場合は「高かろうおいしかろう、安かろうまずかろう」という言葉をよく聞きますね。

例えば一つ120円のシュークリームと200円のシュークリームがあった場合、
「高い方がおいしいとは思うけど・・・」と120円のシュークリームを購入する消費者もいれば
「高い方がおいしいはずだから」と200円のシュークリームを購入する消費者もいます。

昨今の食品市場では後者の購買心理が台頭していることを証明する事例が多くみられます。
高価格であること自体が価値を訴求して、それを受け入れる消費者が増えてきています。

デフレと言われた経済環境の中では「良い商品をより安く」という方針でモノづくりが行われてきましたが、今は「適正価格でより良い商品を」という方針のモノづくりが通用するようになってきているのではないでしょうか。

「どうやってコストを下げるか」ではなく、「どうやって消費者に認めてもらえる価値をつくり出すか」という発想の転換が必要になってきます。

人間は食品を口にする時、情報から味わう

昨年末に社会問題化したホテルやレストランにおける食材偽装問題。
人間が記憶に刷り込まれた情報で食品のおいしさを判断するという消費者心理を巧みに悪用した事件でしたね。

車エビとブラックタイガー、焼いたり煮たりソースがかかった状態でどのくらいのおいしさの違いがあるのでしょう。ブラインドで食べさせられたら区別がつかないかもしれません。
しかし、それを食べた消費者は「おいしいものを食べた」という満足感の価値を享受していることも事実です。

食べたいものがすぐ手に入る日本で消費者が食品に求める価値は
一、おいしさ
一、健康
一、安全
売上げを上げるため、コストを下げるために嘘をつくのはもってのほかですが、嘘をつくことなくお客様に価値を提供していくことは今の日本の食品市場では大切です。

単に「低価格である」と言う価値ではなく、消費者が価値を感じる要素、情報を見つけ出し、それを製品に反映させて、価値がより解りやすいように商品化(ネーミング、パッケージ、キャッチコピーなど)を工夫することが新製品・新商品開発の一つの大きなポイントではないでしょうか。

コストが高く販売価格が高くなっても、そのような商品を求めるお客様が確実にいることを今回の事件が教えてくれました。

人に自慢できる商品を目的とした新製品・新商品開発

皆さんは新製品・新商品開発を始めるにあたってどのような商品をつくろうと思いますか?
「売れる商品」「利益の出る商品」「お客様に喜んでもらえる商品」「消費者ニーズを満たす商品」など答えは様々でしょう。

私は「人に自慢できる商品をつくる」ことを目的に新製品・新商品開発を進めてきています。
「これいいでしょ」と人に聞いて「それいいね」「それすごいね」との答えがもらえる商品です。
横柄、上から目線と思われる方がいるかもしれませんが、専門家なのですからこのぐらいの意気込みは必要でははないでしょうか。

ありきたりの商品では決して自慢できませんよね。
自慢できるのは、他の商品とは違った、今まで人が気が付いていない価値を持った製品、商品でなくてはなりません。
そのために製品レベルの価値の違い、商品の物語性、商品、情報発信、販売方法の差別化など自慢できる要素が必要になります。

自慢できる商品を生み出すために私が行なってきた方法を参考までにお伝えします。
それは、友人、知人の誰かひとりを頭に思い浮かべ、その人に自慢できる商品を考えてみることです。
相手が違えば自慢できる商品のアイデアがいくつか出てくると思いますが、自社の状況、市場の環境、ターゲットの大きさなどを勘案してそのアイデアを絞り込みます。
意外と簡単に出来て大きな効果が期待できます。
是非一度お試しになられてはいかがでしょう。

鮨びぃる

九州の友人から「鮨びぃる」なるものが送られてきました。
熊本にある「花の香酒造」という酒蔵の商品です。

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以前に日経MJの新商品コーナーで紹介されているのを見て気になっていた商品です。
清酒という表示がありますが、従来の清酒の味わいではなく酸味が効いて甘みも残っり、アルコール度数も通常の清酒の約半分の7%、そして発泡性でなかなかおいしい(私には向いている)お酒です。
酸味が強いために味覚をリフレッシュさせて刺身などがおいしく感じますし(甘みがちょっと強いでしょうか)、ビールのようにお腹が膨れることもなく、清酒のように酔いが強くなることもありません。まさに和食の食中酒としてはもってこいの酒だと思いました。

低アルコール清酒は清酒メーカーからいくつか出ています。
市場規模は清酒全体の約1%ということでまだまだ小さな市場ですが、新しいお酒として今後伸びていくのではないかと思います。

この商品の参考になる点は低アルコール清酒ではなく新カテゴリの酒として打ち出してきているところです。(製造元のサイトを見ると「低アルコール日本酒」のカテゴリで紹介されてはいますが)
低アルコール清酒、日本酒となると従来の清酒、日本酒の亜流イメージ(従来の清酒が本物でそのまがいもの?)がありますがこの商品にはそれが感じられません。

推測ですが、製造工程は清酒と大きくは変わらないでしょう。
低アルコール化した清酒ではなく、長い年月で蓄積されてきた清酒づくりのノウハウ、技術を生かして生み出した新しいお酒とのポジショニングは見事だと思います。(酒税法上は「清酒」ですが)

皆さんの業種でもこのような考え方で新製品開発をされると、お客様にとって魅力的かつ新しい価値を持った商品が誕生するかもしれません。

人造イクラってご存知だと思います。イクラのまがい物というイメージがありますが、その技術でスペインで製造されて人気が出ている商品があります。
人造イクラの製法を新しい加工方法としてとらえることで生まれた新商品のようです。
Caviaroli Olive Oil Caviar
興味のある方はこちらをご覧ください。 http://caviaroli.eu/

今回の「鮨びぃる」もそれと通じるところを私は感じます。

コモディティ化戦略 ハウスとS&Bのからし

karashi家内がハウスとS&Bのからしを買ってきました。パッケージを見比べて驚きました。色使いは多少違うものの書かれている内容はほとんど同じで、企業ロゴが無ければどっちの商品かわからないほどそっくり。(画像をクリックすると拡大するのでお確かめ下さい)

相違点(差別化点)を探せば、ハウスのメインビジュアルが「とんかつ」であるのに対しS&Bは「シュウマイ」(サイドに「とんかつ」画像がある)。さてどっちの料理の方がからしの使用頻度、使用量が多いのでしょうか。
もう一つはハウスが22gに対しS&Bは23g。1gの増量は何を意味するのでしょう。ほとんどの消費者は気付いていないと思います。

あくまでも推測ですが、両社とも元々チューブ入りからしは販売しており、ハウスが先にその上級品として「特選 本香り からし」を発売し、S&Bがそれに追随して「本生 本からし」を発売した経緯があるのでしょう。
このような割り切った商品戦略もあっていいと思います。二社択一の選択に消費者を引き込み、このカテゴリを二つのブランドで占有していくことで両社の利益が出るのであれば。

実査にPOSの月次データで確認したところ、二つのブランドが販売量で上位にありややS&Bが多いもののほぼ拮抗しています。しかしながらブランド間の差異がないことから、結局は価格競争になって来ているようです。
消費者にしてみれば、同じ商品にしか見えず、二つ並んでいる場合少しでも価格の安い方を手にすることが多いのではないでしょうか。POSの日次データで見ると平均価格が低い、すなわち店頭での特売の有無で1.5倍ぐらいの販売量の開きが見られています。

差別化戦略だけでなくこのようなマーケティング戦略でも自社に成果が出ることもあります。
さて、皆さんがもしこのカテゴリに新規参入するとすればどのような商品戦略を取るか考えてみたらいかがでしょう?