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マーケティングの目的は「顧客づくり」

9月の人事異動があってか「マーケティング部門に異動になったのですが、何をしたらいいのかわかりません」という内容の問い合わせがここ何件かありました。

新製品開発、新製品・新商品開発に始まり、情報発信のための広告宣伝、ネット活用、販売促進などなどマーケティングには多くのプロセスがありますが、「全てのプロセスに共通した目的は『顧客をつくること』で、その目的のために自分は何をしたらいいのか考えることが大切です」と答えています。

顧客とは「自社の商品を気にかけてくれるお客様」、言い換えれば「自社商品のファン」、メーカー視点ちょっと不遜な言い方ですがよく使う「リピータ」です。

以前お手伝いしたある農産物加工メーカーで実際に会った話です。
そのメーカーはいくつかのショッピングモールで商品を販売しているのですが、新しく使うことになったショッピングモールから来た注文にお断りのメールを出していました。
その理由は単に「受注処理がまだよくわからない」というもので「大した売上げではないから」と言うのです。
どうして大した売上げではないのでしょう。
そのお客様は二度とそのメーカーの商品を買うことは無いでしょうし、逆に注文が出来てその商品が気に入れば毎月購入してくれるかもしれないのです。
仮に5,000円の商品であれば、5,000円の売り上げを失ったのではなく年間60,000円の売り上げを失っているのです。
ネットショップだけでなく実店舗においても同じです。
特に食品においては購入頻度が圧倒的に高いのですから「顧客をつくる」ということが業績向上にはとても大事なことになります。

お客様に価値のある製品をつくり、その価値をさらに高める商品化を行い、その価値をお客様に伝え、身近な売り場に陳列し、気に入ってもらって顧客になってもらう、利益は自ずとついてくる、これがマーケティング、特に食品マーケティングの基本的な考え方だと思います。

補足で一言
自社のファンになってもらうためにはマーケティング部門だけでなく、会社全体のお客様に接する態度が大事になってきます。
経営者、社員の皆さんの態度、対応の良さに好意をもつことがひいては商品への好意を醸成しファン(顧客)になってくれることでしょう。
マーケティングは全社活動です。

低価格競争から価値競争へ

大手百貨店グループのバイヤー社内研修に呼ばれ新製品・新商品開発の講演をしてきました。

メーカーからの商品案内、商品発掘に対応するだけでなく、素材、製法といったメーカーの持つスキル、ノウハウにまで立ち入って、メーカーと協同で価値の高い商品の開発を行わなければならないという会社の方針があるからでした。
このグループにかかわらず、近年、スーパー、コンビニなど大手小売ではメーカーと一緒になった新製品・新商品開発が盛んに行われています。

同じような新製品・新商品開発にPB(プライベートブランド)がありますが、これはどちらかというと多くの場合、低価格化を実現する施策であり、メーカーの既存品のパッケージなどを変更するなどの新製品・新商品開発が主でした。
しかし、売り上げは確保できても利益が伸びないという低価格化競争に限界が来たため、食品メーカーだけでなく大手小売りも含め、価格の競争から価値の競争にシフトしてきています。

ご覧になられた方も多いと思いますが、先週水曜日の日経MJに「2014年上期ヒット商品番付」が発表されていました。
そこでは、増税後も価値の高い商品が好調と言う意味の「勝ち組消費」は東の大関でした。

この現象は食品にも見られておりまだまだ市場規模は大きくはありませんが、これから伸びていくことは間違いなく、食品市場全体の伸びが期待できない状況では価値の高い商品の伸びる分だけ低価格対応してきた既存品の売り上は低下することになります。

だからと言って自社のすべての既存商品の価値を高めなくてはいけないということではありません。
多くの企業はまだまだ売上げの主体が既存商品に依存しているはずですから。
しかし、「気が付いたら既存品の売上げが低下していた」とならないように、新カテゴリーや高級品の位置づけで、早目に価値のある商品の開発に取り組む必要があるのではないかと思います。

マーケティングに必要な二つのコストパフォーマンス

コストパフォーマンス良いう言葉がよく使われます。
日本語にすると費用対効果。

マーケティングにおいて、特に大切な二つのコストパフォーマンスがあります。

一つはマーケティング投資に対しての効果。
ある費用をかけてその効果(ブランド力向上、売上げ、利益など)が大きくなるほど「コストパフォーマンスが高い」と言います。
企業は費用を使うにあたって、それがもたらす効果を予測して投資をします。

例えば、インターネット広告などない、テレビ広告全盛の時代、全国規模で効果が出る宣伝広告の費用は20億円、30億円と言われていました。
それでも「やらないよりましだろう」と言うことで数億円の広告を打つ企業が多くありました。
広告宣伝は効果がはっきりしませんので致し方ないとも言えますが、どれほどコストパフォーマンスを考えたのかという言う点で問題のある投資です。

マーケティングでもう一つ大事なコストパフォーマンスがあります。

それは、お客様にとってのコストパフォーマンスで、言い換えれば「自社が如何に価値の高い商品を安く提供できるか」ということです。

お客様は我儘で、何かいいこと、自分に得なことを持つ商品に興味を持ち、購入します。
あまたある競合品と商品の差別化されていない商品の売り上げを高めるために、特売と称して定価を下げる販売施策も、お客様の期待する「コストパフォーマンスの高さ」を訴求し購入を喚起させようとしているわけです。
特売の問題点は、自社の特売が終わって、競合商品が特売を始めるとそっちにブランドスイッチしてしまうか、次回の特売まで買い置きで凌ぐとか、結局低利益の商品になってしまうことです。

最近では「ちょっとぐらい高くても質のいいもの」を求めるお客様が増えていると言われています。
競合商品と同価格か、ちょっと高めの価格設定で、質の高い、価値のあるコストパフォーマンスの高い商品(お客様が価格を上回る「何かいいもの」「何か得するもの」)をつくり提供していくことが大事になってきているのではないでしょうか。

なぜ、ノンアルコールビールは高くても売れるのか

これから暑さが増してくるにつれつれビールがおいしくなってきますね。
ただ時と場所でアルコールを飲んではいけないことがあって、最近ではノンアルコールビールに人気が出ています。

皆さんはノンアルコールビールが高いことはご存知でしたか?
ノンアルコールビール、いわゆるビールテイスト炭酸飲料の食品衛生法の表示は「品名:炭酸飲料」です。
一般的な炭酸飲料と比べて一缶あたり20円ぐらい高くなっています。
ビールと違って酒税はありませんし、一部のブランドでは原材料も麦芽を一切使わず、ホップ、香料、調味料、カラメル色素でビールテーストをつくり出していて一般的な炭酸飲料とはほとんど原材料、製造コストは変わらないにもかかわらず。

これはお客様が商品に価値を認めているから「価格が高い」という不満が無いのです。
その価値とは「アルコールが含まれていない酔わないビール」。
「ビールを飲みたいけど酔うのはだめ」という時と場合において、ビールに対する不満が「酔う」ことであり、その不満を解消したところに価値をおいてくれているのではないでしょうか。
「アルコールの無いビール」と「ビールの味わいの炭酸飲料」、成人でビールを飲む消費者の多くは前者に価値を置き、魅力を感じるのではないでしょうか?

日本の大手ビールメーカーはそれぞれグループ内に飲料会社があるにもかかわらず、製造はビール会社です。
また、コンビニ、スーパーなどでは酒類の陳列棚、またはその隣に並べられています。
「アルコールの無いビール」をうまく演出していますね。

「おいしさ」のつくり方、伝え方

2009年に新橋に「俺のイタリアン」を出店して、現在、イタリアンの他にフレンチ、割烹、果てはおでん、蕎麦まで都心部中心に全8業種24店舗の店があり、一部テーブル席はあるものの基本は立ち食いスタイルです。
にもかかわらず、各店とも行列が絶えません。

ビジネスコンセプトはお客様の回転数を高めて低価格で料理を提供するというもので、これまででも同じビジネスモデルとして以前から「牛丼の吉野家」などがありました。

消費者が飲食店に求める価値は大きくは以下の三つではないかと思います。
1. おいしさ
2. コストパフォーマンス
3. 食事の場の雰囲気、サービス

この三つの価値を同時に提供することは非常に難しいことです。
吉野家は1. おいしさ 2. コストパフォーマンスに、時間節約の価値を加え、3. 食事の場の雰囲気、サービスを除くことで「うまい、安い、早い」という価値提供で差別化を図り成功してきました。
今回の「俺の●●」も1. おいしさ 2. コストパフォーマンスで、どちらもコア・コンセプトは「おいしさ」です。

二社の違いにお気づきでしょうか?
「俺の●●」は「おいしさ」という言葉を使わずに高級食材をふんだんに使って、それを調理する料理人に業界の一流と称される人を集めていると言う情報を発信しています。
つまり「おいしさ」と言う言葉を使わずに、そのエビデンス(=根拠)を訴求することでお客様に「おいしさ」を伝えています。
インターネットが発達した情報社会の今、単に「おいしい」と言うだけでなく、「おいしさ」の根拠の情報の方が口コミ、ネットコミになりやすく情報が拡散します。

今回は飲食業の話ですが、食品の新製品・新商品開発においても「おいしさ」をコアコンセプトにして、どのような素材で、どのようにつくってその「おいしさ」を生み出したのかと言うエビデンスをターゲットにきちんと伝えていくことが大事なのではないかと思います。

「味覚」は電気信号、「おいしさ」は感情

安倍晋三首相とオバマ米大統領が食卓外交を行った東京・銀座のすし店「すきやばし次郎」がマスコミ、ネットで話題になっています。
「おまかせ」コースは3万円、オバマ大統領は「今日食べた寿司が人生で一番おいしい」と話したことも紹介されています。

消費者が食品に求める価値で一番大きなものは「おいしさ」ですが、非常に主観的なもので万人が認める「おいしさ」がないために食品業界に携わる皆さんにとってはいつも悩まされるのではないでしょうか。

人が食物を口にしてその味わいを感じる(=味覚)のは、味蕾と言う受容器が食物に含まれる化学成分を電気信号に変えて脳に届けるからです。
脳には様々な情報が蓄積されていて、それらの情報をベースに受け取った電気情報を判定します。
昨年問題となった食品偽称を例にとると、食品から「車エビ」という情報を視覚で取得し「車エビはおいしい」という情報が融合して、仮に「バナエイエビ」を口にしてもその食品は「おいしい」と判定してしまうのです。

つまり「おいしい」「おいしくない」という判定は、人間のそれまでの経験による記憶で行われます。
「味覚」は電気信号に過ぎず、「おいしさ」は感情なのです。

もう一つ、「おいしさ」を感じる人間の心理に「認知的不協和」と言うものがあります。
人が矛盾する認知を同時に抱えた時に感じる不快感のことで、人はその不快感をなくすために矛盾を無くそうとします。

3万円という寿司を口にした時、あまりおいしいと思わなかったとしたらそこに矛盾が生じます。
そしてその矛盾を解消しようとした時、価格は客観的事実なので主観的な「おいしさ」で解消しようとします。
「ああ、これが3万円のおいしさなんだ」と。

消費者においしいと思ってもらう食品をつくるにはこのようなお客様の心を動かす必要があります。
前提として「味わいにエビデンスがある、高品質な製品があってこそ」ということは言うまでもないことですが。

消費者の健康志向にこたえる商品を

高齢化に伴う健康志向から健康食品が注目されてきています。
一昨年の内閣府消費者委員会の調査では、約6割の消費者が利用し50代以上の約3割がほぼ毎日利用しているという結果が出ています。
健康食品の市場規模は約2兆円に達していると言われています。

日本の法律では、人間が口に入れるものは「医薬品」と「食品」に分けられており、「健康食品」はその名の通り「食品」でしかありません。
健康食品には国の制度によって審査、許可された「特定保健用食品(トクホ)」、成分の効果をうたえる「栄養機能食品」は機能性の訴求は出来ますが、その他の健康食品は一切機能性の訴求は出来ません。

農林水産省による「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」がスタートするなど、素材の機能性研究が本格的に始まってきていますし、本年度には政府の成長戦略の一環で、健康食品の表示規制緩和が解禁されようとしています。
このような背景から、健康食品はこれからますます市場を賑わせ、拡大していくのではないでしょうか。

今の時代、健康維持、増進は消費者にとって大きな価値です。
通常食品を提供してきている食品メーカーにおいても消費者の健康につながる商品の開発は必要になってきます。
これまでもビタミンやミネラルなど過去に「健康にいい」とされる素材を強化した商品はありますが、多くの場合売上げを上げるための手段として行われてきた面が強いと思います。
これからは、手段ではなく消費者の健康を目的とした商品を追求していくことになるのではないでしょうか。

後天的な味覚「アクワイアード テイスト」

あまり聞きなれないと思いますが、「アクワイアード テイスト」という言葉があります。
英語で書くと「Acquired_taste」です。
最初は不快感を感じても、何回か口にするにしたがって「おいしさ」を感じ、クセになる味わいとでも言うのでしょうか。

コーヒー、ビール、ウイスキー、チーズ、納豆、コーラ、からし、燻製・・・ などなど数え上げればきりがないほどです。 「苦味」「酸味」「辛み」「臭み」という成分を持った食品の味覚を「アクワイアード テイスト」と言います。

ウイスキーを最初に飲んで「おいしい」と思った人は何人いるのでしょう。
多くの人は、最初「おいしくない」と思っても、しみじみじっくりウイスキーを飲むことのかっこよさ、大人の世界へステージアップに憧れて飲み続けていくうちにその味わいが好きになり、いつの間にかウイスキー通になっていったのではないでしょうか。
「アクワイアード テイスト」を受け入れるようになるためには情報の質と摂取回数、この二つが大きく影響します。

同じ酒類で、甘みがあってフルーツの香りがするサワーがありますが、こちらは「アクワイアード テイスト」と逆でとっつきやすい味覚です。
そのため新発売時には人気がありますが、とっつきやすい分飽きやすいため、メーカー各社は手を変え品を変え新商品を市場に導入しなくてはなりません。

「アクワイアード テイスト」の商品がロングセラーになりますが、だからと言って簡単に商品化しては失敗します。
味わいにどのくらいのクセを持たせるかと言う問題と、売れるまでに長い時間がかかるという問題があります。

世間を騒がしている二つのブランド戦略

「聴覚障害の作曲家」と「リケジョの星」、分野こそ音楽と科学ですが、物語をつくることで楽曲、研究成果の話題性を高めることに成功しています。

物語がブランド力を高めることは間違いありません。
特に、これまでには無い物語は話題となりやすく、マスコミが大々的に取り上げ、社会の人々の口コミを誘発し、その結果多くの人の知るところになり、商品の売上げが上がるという成果に繋がります。
後者の研究成果の場合は、研究予算が集まりやすくなるようです。

新製品・新商品開発の世界でその昔、新商品の発表時に女性開発者を前面に出すという広報活動が良くみられました。
今でこそ企業内で女性の活躍の場も広がっていますのでそのようなことは無いと思いますが、当時の新製品・新商品開発を言えば男性が中心の業務で、単にプロジェクトに名前を連ねていただけの女性スタッフをあたかもその女性が開発したかのように広報している企業が結構ありましたね。

しかし、物語はつくるものでなく、何年、何十年のブランドの継続の結果として生まれてくるものではないでしょうか。
またブランドとして社会に認められるには、物語の対象であるモノそのものに価値があり、嘘偽りが無いことが基本ではないでしょうか。

今回の二つの出来事は、話題作りには成功してもブランド構築にはつながらない、ブランド戦略の失敗事例のような気がします。

ペプシコーラの名指しの比較広告

3/1の朝刊の見開き広告で「ペプシNEXT ZERO」の比較広告を見て「ここまでやっていいのか」とさすがにびっくりしました。
その後オリンピックの日本招致決定のシーンを模したテレビ広告も盛んに放映され話題になっていることはご承知の方も多いのではないでしょうか。

大手メーカーであるサントリー社のやることですからきちんと法的な問題はクリアした上での対応とは思いますが、このように競合商品を名指しで比較する手法は日本の大手メーカーほとんどありませんでした。
1997年に、ペプシコ社の日本に於ける事業がサントリー社に譲渡される以前は米国のペプシコ本社主導で同じような比較広告が行われていますが、それすら紆余曲折があって対象商品は「その他のコーラ」、コカコーラの画像にはモザイクをいれたものでした。

1987年から公表されている「比較広告に関するガイドライン」で、以下の三つを満たせば比較広告は違法にならないという方針が出ています。
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
(3)比較の方法が公正であること

「おいしさ」というのは非常に主観的なものです。
果たして(1)の「主張する内容が客観的に実証されている」要件を満たしているのでしょうか。
実際に3/1の広告の一部に「この勝利は偶然なのか。必然なのか。」というコピーが入っています。
私が今回の広告に違和感を持った理由はこの点なのです。

コカコーラ社がこの広告に対抗して、ブランド名を隠さないで味覚テストを行い「おいしさで、コカコーラZEROが勝利しました」とやったら(可能性は高いでしょう)「客観的に実証されていないので違法」となるのでしょうか。

私は常々「おいしさとは味覚+情報」だと思っています。
味覚だけでは商品が売れないので新製品・新商品開発担当者は苦労しているのではありませんか?