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新製品・新商品開発の目的は新たな価値をつくること

売り上げを向上させることを目的にして新製品・新商品開発に取り組んでいませんか?
今の時代のマーケティングは、つくった商品をいかに売るかから、消費者が買いたくなる仕組みをどのようにつくるかに変わってきています。
消費者が関心があるのは商品そのものではなく、その商品が自分にとってどのな価値、恩恵(消費者からみるとベネフィット)があるかということなのです。

私がニッカウヰスキーに在籍していた時に体験した事例を紹介しましょう。
今から23年ほど前に酒税法の改正があり、それまでアルコール37%未満のウイスキーはすべて37%の酒税がかかっていたのですがアルコール度数8%から12%の範囲に限ってアルコール度数に応じて酒税が低減されることになったのです。
それまではアルコール37%のウイスキーでもアルコール8%の水割りウイスキーでも容量当たりの酒税は同じ金額だったのですが、酒税法の改正によりアルコール8%の水割りウイスキーは37分の8に酒税が下がることになりました。
当時多くの消費者はウイスキーを水割りで飲んでいましたので、缶に入れていつでもどこでも飲めるようになればウイスキーの消費は大きく増えるものと業界、社内ではウイスキーブームの再来を期待しました。

早速私に新製品・新商品開発の指示が出たのですが、製品はウイスキーを水割りにしたものと決まっているわけですからやることとしては缶の容量、ネーミング、価格設定、キャッチコピーなどの検討ぐらいしかありません。
それらの検討をしながら「本当に水割りウイスキーは売れるのか」という疑問が沸いてきました。
一人の部下と一緒にウイスキーに対するウイスキーユーザーの価値観、嗜好性、飲まれるシーンなどをマトリクスにして検討したのですが買ってもらえる理由が見つからないのです。
その原因としては
一、ウイスキーはモノではなくウイスキーを飲むという「かっこよさ」「やすらぎの演出」などのコトで飲まれているので氷が入っていないグラスと比較して缶入りで飲まれることは少ない
一、ウイスキーユーザーは家にウイスキーが置いてあり、グラスにウイスキーを注いで冷蔵庫から氷を取っだし水を加えるのは面倒なことではなく割高の缶入りウイスキーを飲むケースは少ない
一、ウイスキーユーザーは自分のウイスキーの濃さの好みがあるので8%と決まった度数では満足しない
一、あるとすれば出張、旅行中に駅の売店で購入して飲むことだが、ウイスキーにははやすらぎという価値があるので行動中に飲まれるケースは少ない

最終的にウイスキーブームの再来を期待していた多くの意見に従わざるを得ず発売することになりましたが水割りウイスキーを市場に投入したサントリー社、ニッカ社とも成果を上げることは出来ませんでした。
「多くの人がウイスキーを水割りで飲んでいるので水割りにしたウイスキーを缶に入れた商品は売れる」
「これまでなかった差別化された商品だから売れる」
という意見は一見正論のように思ってしまいますが、深く考えると価値を提供できていなかったのです。

消費者の心理を理解し、自分自身もその立場になって考え、ターゲット層に受け入れられる価値をつくり出すことが新製品・新商品開発の目的であり、その結果として売り上げの向上があると考えて新製品・新商品開発に取り組むことが大切です。

飲食シーン、利用シーンをターゲットにする

ターゲット設定というと多くの方は「誰に」と考えがちです。
デモグラフィック(人口統計分布)とサイコロジック(心理的変数)で消費者を分類することも大切ですが、飲食シーン、利用シーンをターゲットにすることも必要です。

飲食シーンでは
一人で食べるのかみんなで食べるのか
ごはんのおかずのおかずで食べるのか、酒のつまみで食べるのか
朝に食べるのか、昼に食べるのか、夜に食べるのかなど
飲食シーンの違いで商品サイズ、味わい、キャッチコピーが違ってきます。

また利用シーンでは
プレゼントに利用するのか
観光みやげにするのか
ノベルティに使うのかなど
利用シーンの違いでやはり製品設計、商品設計が変わってきます。

いくつか事例を紹介します。

カルビーの「フルーツグラノーラ」
1991年発売と言いますから商品としてはロングセラーですが一時伸び悩んでいました。
カルビー社は、1911年ごろに朝食を別々にとる家族が増えてきて簡便に済ませたいというニースがあることに気づき、朝食市場にターゲットを絞ったのです。
その結果40億円ほどの売り上げが3年後の2014年には140億円を超えるまでになっています。

アサヒ飲料の「ワンダ モーニングショット」
それまでにもコーヒー飲料を出していましたが、午前中に缶コーヒーを飲用するボリュームが全体の約4割以上を占めることが調査結果で解り、その市場でトップシェアを取ることを目標に2002年に「朝専用缶コーヒー」を発売します。
研究所や新製品・新商品開発部署では中身の差別化を図ったと思いますが機能的訴求はほとんどなく「朝専用」という訴求と広告宣伝で発売年には400万ケースを販売し、今では他のWANDAブランドも含め4,000万ケースに達しています。
「朝専用」だけでこれだけヒットすることに疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、機能的に差別化がくて商品の選択に迷う場合にシーンを限定されることで「無駄な悩みを避け軽い気持ちで選択する」という消費者心理によるものと私は思います。

他にもまだいろいろなシーンでニーズは存在するのではないでしょうか?
外国人観光客の増加により新しいシーンも出来てきています。
このように飲食シーン、利用シーンを絞り込んで新製品・新商品開発、マーケティングを進めることも必要です。

新製品・新商品開発における市場のセグメンテーション

セグメンテーションとは、共通する特質を基準に不特定多数の人々を分類する 市場細分化のことことです。
その結果出来たいくつからのグループの中かから、自社の強み、新しいアイデアを発揮出来るグループを選択しターゲットとします。
万人に自社商品を買ってもらいたいという気持ちは誰でも持ちますが、商品が他の競合商品との差別化が出来ませんので競争関係が激しい今の食品業界では効率的ではありません。

セグメンテーションはいくつかありますが、マーケティングでよく使われるのがデモグラフィック(人口統計分布)とサイコグラフィック(心理的変数)の二つです。

デモグラフィックでは年齢や性別、家族構成や職表、社会的な階層がその変数になります。
どんなに魅力的は商品をつくり出してもその存在を知ってもらわなくては売れることはありません。
この分類は昔から宣伝広告効果の最大化を目的としてよく使われてきています。
例えば、深夜のニース番組は中年サラリーマンの視聴率が高く、バラエテティー番組は若者の視聴率が高かったりしますので年代でセグメンテーションしてターゲットを設定します。。
このように宣伝広告に効果のあるセグメンテーションでも新製品・新商品開発におけるセグメンテーションにはあまり向いていません。

最近ハ新製品・新商品開発で必要なセグメンテーションはサイコグラフィックと言われ、価値観、嗜好性、ライフスタイル、性格などが変数になります。
価値観が多様化している今の時代は年代で分類することは難しいと言わざるを得ません。
消費者志向といいますが、常に消費者の気持ちを考え、消費者心理を理解することが欠かせません。

私は新製品・新商品開発をするにあたってもう一つのセグメンテーションを採用します。
それはシーン(場面)での分類です。
新製品・新商品開発のお手伝いをしていると、完成した製品を開発会議や経営会議などで試食、試飲する場面に出会います。
小さなカップを使った試飲や少量を口にするだけの試食で「もっと味わいはしっかりさせた方がいい」「味にインパクトが欲しい」という意見が出て担当者は品質設計をやり直すことがあります。

ポカリスエットの開発にあたって話ですが、二つのタイプの試作品もって研究所の何人かで山登りをして汗をかいたところで試作品を飲み比べました。
その時全員が薄い味わいの試作品の方を「ごくごく飲めておいしい」と評価しました。
それを社内で提案したところ「まずい」「これじゃ売れない」という意見が圧倒的だったのですが、社長の「汗をかいた後に飲めば、きっと理解してもらえるはず」発言でポカリスエットの味が決まったという有名な話があります。
飲料だけではなく、例えば干物、お酒のつまみにする場合とごはんのおかずにする場合とでは塩味の強弱などの味付けを変えた方が売れるのではないでしょうか。

「どんな人に飲んでもらうか」という人のターゲット設定に加えて、「どんな場面で飲み、食べるのか」というシーンのターゲット設定が必要な場合が多くあると思います。