月別アーカイブ: 2014年3月

世間を騒がしている二つのブランド戦略

「聴覚障害の作曲家」と「リケジョの星」、分野こそ音楽と科学ですが、物語をつくることで楽曲、研究成果の話題性を高めることに成功しています。

物語がブランド力を高めることは間違いありません。
特に、これまでには無い物語は話題となりやすく、マスコミが大々的に取り上げ、社会の人々の口コミを誘発し、その結果多くの人の知るところになり、商品の売上げが上がるという成果に繋がります。
後者の研究成果の場合は、研究予算が集まりやすくなるようです。

新製品・新商品開発の世界でその昔、新商品の発表時に女性開発者を前面に出すという広報活動が良くみられました。
今でこそ企業内で女性の活躍の場も広がっていますのでそのようなことは無いと思いますが、当時の新製品・新商品開発を言えば男性が中心の業務で、単にプロジェクトに名前を連ねていただけの女性スタッフをあたかもその女性が開発したかのように広報している企業が結構ありましたね。

しかし、物語はつくるものでなく、何年、何十年のブランドの継続の結果として生まれてくるものではないでしょうか。
またブランドとして社会に認められるには、物語の対象であるモノそのものに価値があり、嘘偽りが無いことが基本ではないでしょうか。

今回の二つの出来事は、話題作りには成功してもブランド構築にはつながらない、ブランド戦略の失敗事例のような気がします。

ペプシコーラの名指しの比較広告

3/1の朝刊の見開き広告で「ペプシNEXT ZERO」の比較広告を見て「ここまでやっていいのか」とさすがにびっくりしました。
その後オリンピックの日本招致決定のシーンを模したテレビ広告も盛んに放映され話題になっていることはご承知の方も多いのではないでしょうか。

大手メーカーであるサントリー社のやることですからきちんと法的な問題はクリアした上での対応とは思いますが、このように競合商品を名指しで比較する手法は日本の大手メーカーほとんどありませんでした。
1997年に、ペプシコ社の日本に於ける事業がサントリー社に譲渡される以前は米国のペプシコ本社主導で同じような比較広告が行われていますが、それすら紆余曲折があって対象商品は「その他のコーラ」、コカコーラの画像にはモザイクをいれたものでした。

1987年から公表されている「比較広告に関するガイドライン」で、以下の三つを満たせば比較広告は違法にならないという方針が出ています。
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
(3)比較の方法が公正であること

「おいしさ」というのは非常に主観的なものです。
果たして(1)の「主張する内容が客観的に実証されている」要件を満たしているのでしょうか。
実際に3/1の広告の一部に「この勝利は偶然なのか。必然なのか。」というコピーが入っています。
私が今回の広告に違和感を持った理由はこの点なのです。

コカコーラ社がこの広告に対抗して、ブランド名を隠さないで味覚テストを行い「おいしさで、コカコーラZEROが勝利しました」とやったら(可能性は高いでしょう)「客観的に実証されていないので違法」となるのでしょうか。

私は常々「おいしさとは味覚+情報」だと思っています。
味覚だけでは商品が売れないので新製品・新商品開発担当者は苦労しているのではありませんか?

マーケティング論を忘れて街へ出よう

セミナーを受けたり、専門書を読んだりしてマーケティングの勉強をされた方は多いと思いますがそれが役に立っている人はどのくらいいるのでしょう。

私は、マーケティング理論を知っていることに越したことはありませんが、知らなくてもいいと思っています。

マーケティング理論の多くは大手企業の成功事例を後付で論理的に説明していることが多く、特に食品の中堅、中小企業においてはあまり役に立つとは思えません。
それよりも街に出て消費者の購買行動を観察したり、自分が生活者として実際に買い物をしたり料理をして消費者の購買心理を理解することが必要です。

もちろんセミナーや専門書でマーケティングを知るだけでなく、自分なりにその本質を考え、その考えを自社に応用することが出来ればいいのですが、ほとんどの人は知ることに集中して自分の頭で考えるということはしていないのではありませんか。

そしてその弊害は、マーケティングで使われている用語を共通言語のように口にすることです。
皆さんの周りにもそのような人はいませんか?
「マーケティング」「商品コンセプト」「イノベーション」「差別化」等々数え上げればきりがありませんが、これらを口にするだけで問題が解決することはありません。

大事なのは知ることより自分の頭で考えることではないでしょうか。

権威に弱い日本人ゆえの現象?

先日、加工食品中小企業のトップの方から「うちもモンドセレクションに応募して賞を取ろうと思うのだが」と言う相談を受けました。

モンドセレクションの実態を知っている私としてはどう答えていいのか迷いました。
何故なら、応募すれば金賞を取ることは難しくなくラベルにモンドセレクションのメダルを表示することで商品が権威づけされ(実際には消費者がそう錯覚するだけのケースが多いと思うのですが)売上げは上がると思います。
同じような商品が店頭に並んでいる場合には、モンドセレクションの何たるかを知らない多くの消費者はゴールドメダルの表示がある方を選択する可能性が高いのは当然のことです。
中小企業においては効果は大きいと私は思います。

しかし、モンドセレクションの受賞で本当に商品が権威づけされるのでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが、出品商品の格付けは相対評価ではなく絶対評価なため昨年の受賞結果を見ると3200強の出品商品で約2800商品が「Grand Gold Award」「Gold Award」「Silver Award」「Bronze Award」のどれかを取得しているのです。
お金を出して出品し、非常に高い確率で何らかの賞がもらえるのは適切な評価とは言えません。

それを承知で出品する日本の企業の商品は全出品数の5割から7割に達すると言われています。
モンドセレクションの是非を云々するつもりはありませんが、実態は権威に弱い日本の消費者に対しての販促ツールになっています。

しかも受賞した商品を製造販売している企業のホームページを見るとモンドセレクションのメダルを獲得したことで「世界に認められた」と結論づけているところもあります。
消費者の無知に付け込んだ明らかに詐称ではないでしょうか。

私が一番心配しているのは、マーケティング、新製品・新商品開発に携わる皆さんがこのような施策がマーケティングには大事だと誤解してしまうことです。

いつになったら日本に正常な食文化が出来るのでしょう。